(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平5−112938
(43)【公開日】平成5年(1993)5月7日
(54)【発明の名称】路盤補強、盛土、法面補強等の補強土工法とその工法に用いる型枠
(51)【国際特許分類第5版】
E02D 17/18 A 8809-2D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願平3−304164
(22)【出願日】平成3年(1991)10月22日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【目的】 路盤補強、盛土補強、法面補強等の補強土の施工をするに際して、路床上に補強網の正確な敷設・張設ができ、かつ熟練性が要らず、施工期間を短縮でき、その作業性を向上させ得るようにした補強土工法とその工法に用いる型枠を提供する。
【構成】 補強土施工箇所の一側部に、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底で、該底部にブロック積み重ね用嵌合部を有すると共にコンクリート流下もしくは溢出部を備え、かつ該表面の一部に補強網、補強ロープ等の補強体を挿入する補強体挿入部を有する型枠を、該補強体挿入部が前記補強土施工箇所の他側部側を向くようにして設置すると共に、該型枠の該補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、該型枠内に生コンクリートを注入・充填して該補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体とすると共に、該コンクリートブロック体によって該補強体を前記補強土施工箇所に定着させることにより補強土を得られるようにした構成よりなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 補強土施工箇所の一側部に、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底で、該底部にブロック積み重ね用嵌合部を有すると共にコンクリート流下もしくは溢出部を備え、かつ該表面の一部に補強網、補強ロープ等の補強体を挿入する補強体挿入部を有する型枠を、該補強体挿入部が前記補強土施工箇所の他側部側を向くようにして設置すると共に、該型枠の該補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、該型枠内に生コンクリートを注入・充填して該補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体とすると共に、該コンクリートブロック体によって該補強体を前記補強土施工箇所に定着させることにより補強土を得られるようにしたことを特徴とする路盤補強、盛土、法面補強等の補強土工法。
【請求項2】 補強体挿入部を後面上部または前面上部に備えた型枠を積み重ねると共に、該下側に位置する型枠の補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、上側に位置する型枠を介して下側に位置する型枠内に生コンクリートを注入・充填し、該補強体の端部を直接または間接的に一体化したコンクリートブロック体を得るようにした請求項1に記載の路盤補強、盛土、法面補強等の補強土工法。
【請求項3】 表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底の型枠の上部に生コンクリート注入・充填用開口部を設け、また該表面の一部に補強土施工用の補強体挿入部を設け、かつ底部にブロック積み重ね用嵌合部とコンクリート流下もしくは溢出部を設け、前記型枠内に生コンクリートを注入・充填し、コンクリートブロックを得られるようにした路盤補強、盛土補強等の補強土施工用型枠。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、路盤補強、盛土補強、法面補強等の補強土工法とその工法に用いる合成樹脂等よりなる型枠に係り、より詳細には、路盤補強、盛土補強、法面補強等の補強土の施工をするに際して、路床上に補強網の正確な敷設・張設ができ、かつ熟練性が要らず、施工期間を短縮でき、その作業性を向上させ得るようにした補強土工法とその工法に用いる型枠に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、路盤補強、盛土補強、法面等の補強土工法としては、路盤補強、盛土補強等の補強土施工現場における路床上に補強網(網目構造体)を敷設し、該補強網の上に路盤材により路盤を設け、該路盤の表面を路面とする工法が知られている。そして、この工法によれば、補強網の網目で、その上下部位における土粒子のインターロッキンク(アンカリンク)効果によって、該補強網を路床、路盤の土とで一体化させるので、簡単な施工でもって、路盤の強化ができる。
【0003】ここで、前記補強網としては、通常、延伸プロセスによる合成高分子を原料とした土木用プラスチック高強度網が用いられ、路床条件、交通量条件、荷重条件等に応じて一層敷設、多層敷設、あるいは路盤材を包み込むマットレス等に施工している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この補強土工法の場合、次のような問題がある。すなわち、
■ 補強網の種類によっては、一層敷設、多層敷設の場合、該補強網の端部が補強度工事中に捲れたりして、補強網が敷設されていない路床部位の生じることがある。
■ マットレス施工の場合は、路盤材を覆うための工事に多くの手数を要する。
■ 補強網の端部を固定するための手数を要する。
■ 路盤、盛土側部の固定に手数を要する。
等の問題がある。
【0005】ところで、近年、補強土工法において、補強材の引っ張り効果を利用し、垂直、急勾配の盛土が可能で、かつコンクリート擁壁のような大きな基礎が不要な『補強盛土工法』『法面急勾配化工法』が提案されている。そして、この工法によれば、従来のコンクリート擁壁を用いた盛り土工法に比べ、盛り土用地幅を1/2程度まで縮小でき、かつ工費を5割程度削減できるという利点を有する。
【0006】しかし、この工法であっても、周壁部に剛壁面を形成する必要があるので、該剛壁面の設置、および周壁の形成に手数を要するという問題がある。
【0007】そこで、本発明者は、上述した点に鑑み、種々、研究・試験を行った結果、本発明者が先に提案した『コンクリートブロック積み工法とこの工事に用いる合成樹脂製型枠』(特願平2ー231950号明細書参照)を利用することで、前述した各課題を解決できることを究明した。
【0008】本発明は、上述した課題に対処して創案したものであって、その目的とする処は、路盤補強、盛土補強、法面補強等の補強土の施工をするに際して、路床上に補強網の正確な敷設・張設ができ、かつ熟練性が要らず、施工期間を短縮でき、その作業性を向上させ得るようにした補強土工法とその工法に用いる型枠を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の補強土工法は、補強土施工箇所の一側部に、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底で、該底部にブロック積み重ね用嵌合部を有すると共にコンクリート流下もしくは溢出部を備え、かつ該表面の一部に補強網、補強ロープ等の補強体挿入部を有する型枠を、該補強体挿入部が前記補強土施工箇所の他側部側を向くようにして設置すると共に、該型枠の該補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、該型枠内に生コンクリートを注入・充填して該補強体の端部を直接または間接的に一体化したコンクリートブロック体とすると共に、該コンクリートブロック体によって該補強体を前記補強土施工箇所に定着させることにより補強土を得られるようにした構成よりなる。
【0010】また、本発明の他の補強土工法は、前記発明において、補強体挿入部を前面上部または後面上部に備えた型枠を積み重ねると共に、該下側に位置する型枠の補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、上側に位置する型枠を介して下側に位置する型枠内に生コンクリートを注入・充填し、該補強体の端部を直接または間接的に一体化したコンクリートブロック体を得るようにした構成よりなる。
【0011】更に、本発明の補強土工法に用いる型枠は、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底の型枠の上部に生コンクリート注入・充填用開口部を設け、また該表面の一部に補強土施工用の補強体挿入部を設け、かつ底部にブロック積み重ね用嵌合部とコンクリート流下もしくは溢出部を設け、前記型枠内に生コンクリートを注入・充填し、コンクリートブロックを得られるようにした構成よりなる。なお、本明細書において、『生コンクリート』には、通常の生コンクリートの他に、コンクリートミルクをも含む。また、ここで、型枠としては、合成樹脂製、金属製、コンクリート製、板紙製等によって得ることができる各種のものを含む。
【0012】
【作用】本発明の補強土工法は、補強土工事現場における路床上に、補強網等の補強体を敷設すると共に、該補強体の端部に、内部にコンクリートを注入することによりコンクリートブロック体を形成する型枠を配し、かつ該補強体の端部を型枠の前面に形成されている補強体挿入用部に挿入した後、該型枠に生コンクリートを注入・充填することで、該補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体を得ることができ、該補強体を正確でかつ簡単に配設できると共に、併せて側壁等をも得ることができるように作用する。
【0013】また、補強土工法に用いる型枠は、内部に生コンクリートを・注入・充填することで、ブロック体を得られる形態の型枠であり、型枠前部の補強体挿入用部に補強体の端部を挿入した後に、生コンクリートを注入充填し、これを養生することによって、補強体を一体化した構成を、補強土工法において具体化できるように作用し、かつ簡単な作業でもって、マットレス施工と同様の作業ができ、また該補強体の固定作業を省略できるようにも作用する。
【0014】
【実施例】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した実施例について説明する。ここに、図1〜図8は、本発明の一実施例を示し、図1は本実施例の補強土工法の作業工程を示す概略断面図、図2は本補強土工法に用いる型枠の正面図、図3は側面図、図4は平面図、図5は施工状態を示す側面図、図6は型枠を積み重ねた状態の斜視図、図7は型枠の拡大斜視図と、補強体挿入部に補強体を挿入した状態の拡大断面図、図8は補強体としてタイロッド継手を用いた場合の説明図である。
【0015】本実施例の補強土工法は、路盤を補強するための補強土工法であって、概略すると、■路床整地工程、■合成樹脂製型枠設置工程、■補強体配設工程、■生コンクリート充填工程、■路盤材配設工程、■次工程、の六工程よりなる。
【0016】−路床整地工程−
本工程は、路床1を整地する工程である。この工程は、補強土工法を実施するための準備工程であって、後工程で使用する合成樹脂製型枠2の設置し、かつ補強体3の配設、その他工事をスムーズに施工できるように路床1を均らす工程である。
【0017】−合成樹脂製型枠設置工程−
本工程は、路床整地工程に均らされた路床2の所定箇所に合成樹脂製型枠2を設置する工程である。すなわち、合成樹脂製型枠2,2・・を道路、鉄道をつくる左右の所定箇所に設置すると共に、複数段(通常、二段)積み重ね・設置する工程である。
【0018】合成樹脂製型枠2は、図2〜図8に示すように、表面がコンクリートブロック形状と同一に形成された中空有底の平面矩形状の型枠であって、表表面(換言すれば、正面側表面)4には、コンクリートブロックと同様に模様等が形成され、上部には開口部7が形成され、また後面上部には補強体3の端部3a,3bを挿入するための補強体挿入部5が形成され、更に底面には嵌合部を構成する凸部6が形成されている。開口部7は、積み重ねる他の合成樹脂製型枠2の凸部6と係合させ、また生コンクリートを注入充填させるための充填口である。また、凸部6は、積み重ねる他の合成樹脂製型枠2の開口部7と係合させるための係合部で、合成樹脂製型枠2の周壁面8に対して小さく、かつ下向きに突出した形状とされている。また、凸部6の表面、換言すれば、合成樹脂製型枠2の底面9には、1個もしくは複数個の生コンクリート流下用孔(あるいは溢出孔)10が穿設されている。
【0019】ここで、流下用孔10は、コンクリートブロック自体の形状、形態によって相違するが、通常、30cm間隔程度に穿設、その大きさは、3〜10cm径程度とする。しかし、他の大きさ等を選択してもよい。また、合成樹脂製型枠2の側面上部には、切り込み11が設けられている。切り込み11は、合成樹脂製型枠2、2・・を横方向に繋ぐための鉄筋12を設置するための切り込みである。ここで、切り込み11は、V字型、U字型等他の形状としている。
【0020】なお、合成樹脂製型枠2は、通常、工場で予め製作され、その材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、塩化ビニル樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が用いられ、この中でも、FRP等の耐候性、強度を備えたものがより好ましい。ところで、合成樹脂製型枠3は、矩形状に限られることなく、円形、三角形状、その他多角形状体等であってもよく、通常、トラック等の輸送機関で輸送できる種々の大きさの範囲ものである。
【0021】そして、具体的には、合成樹脂製型枠2a,2bを、路床1の左右位置に補強体挿入部5、5が対向するように設置し、該設置した下側に位置する合成樹脂製型枠2a,2bに、更に合成樹脂製型枠2a′,2b′をそれぞれ凸部6と開口部7とを介して積み重ねるようにしている。
【0022】−補強体配設工程−
本工程は、合成樹脂製型枠2の補強体挿入部5に補強体3の端部3a,3bを直接または間接的に挿入・配設する工程である。すなわち、補強体3の両端部3a,3bを合成樹脂製型枠3a・・・,3b・・・の補強体挿入部5に挿入し、また併せて、切り込み11、11・・に鉄筋12を挿入配置し、また縦方向にも生コンクリート流下用孔7を介して鉄筋12を立設・配置する工程である(なお、鉄筋の立設・配置は、前工程で行うこともある)。ここで、補強体3としては、前述した延伸プロセスによる合成高分子を原料とした土木用プラスチック高強度網を用い、通常、ポリプロピレン、あるいは高密度ポリエチレンを原料としたテンサー(三井石化産資製の補強網材)、その他の合成樹脂製網体、繊維製網体、金属製網体を用い、該網体の端部を補強体挿入部5に挿入しやすいように部分的に裂いた構成としている。しかし、金属製、合成樹脂製、繊維製等のワイヤー,ロープその他の耐引っ張り材等を用いることもある。また、必要に応じて、板体、不織布等を用いてもよい。なお、補強体3として、例えば、該テンサーを用いない場合は、通常、タイロッド継手、すなわち、穴開プレート、ボルト、あるいは丸穴棒等の継手16を取り付けたアンカー15(図8参照、なお、図8では孔開プレートよりなる継手を用いている)を用いて、該アンカーを補強体挿入部5に挿入し、アンカー15、継手16等よりなるタイロッド継手等を介してワイヤー等の耐引っ張り材よりなる補強体3を間接的に挿入・配設するようにしている。
【0023】−生コンクリート充填工程−
本工程は、積み重ねた合成樹脂製型枠2a,2a′・・,2b,2b′・・内に生コンクリートを注入・充填してコンクリートブロック体を形成する工程である。すなわち、上側に位置する合成樹脂製型枠2a′,2b′の開口部5より生コンクリートを注入して、該合成樹脂製型枠2a′,2b′の生コンクリート流下用孔10を介して、該生コンクリートを下側に位置する合成樹脂製型枠2a,2b内に充填し、該生コンクリートが上側に位置する合成樹脂製型枠2a′,2b′の下部位置に達した状態で充填を終え、かつ補強体3の端部3a,3bを直接または間接的に合成樹脂製型枠2内に一体化させる工程である。ここで、生コンクリートの強度は、通常のコンクリートブロックにおけるものと同等の強度のものを用いている。そして、合成樹脂製型枠2、2・・内に充填したコンクリートを養生させ、合成樹脂製型枠2、2・・と一体化させると共に、補強体3を一体化する。また、左右方向は切り込み11、11・・と鉄筋12を介してコンクリートが固化・一体化される。なお、型枠2の側面の切り込み11の下方部位に鉄筋12とコンクリートとが十分に包むようにするための開口部を設け、コンクリートの充填を確実にするようにしてもよい。
【0024】−路盤材配設工程−
本工程は、前工程でコンクリートブロック化された合成樹脂製型枠2a,2b間に路盤材(土)13を戻し、路盤を形成すると共に、補強体3をジョイントする工程である。そして、該路盤材13と路床1とは、合成樹脂製型枠2a,2b間で、補強体3により一体化され、また路盤材13は、左右の合成樹脂製型枠2a,2bによって、その移動が保持される。なお、本工程は、通常、前記養生工程と並行して施工するようにしている。
【0025】−次工程−
本工程は、前工程を繰り返して、補強体3を複層敷設する工程である。すなわち、前工程である■合成樹脂製型枠設置工程、■補強体配設工程、■生コンクリート充填工程、■路盤材配設工程の各工程を繰り返すより、合成樹脂製型枠2a・・、2b・・を順次、積み重ね、かつ補強体3,3・・を配設し、かつ該補強体3,3・・を合成樹脂製型枠2,2・・内に一体化し、更に路盤材を配することで、補強体3,3・・を複層敷設し、所定の補強土を有する所定の路盤の道路等を得る。ここで、補強体3,3のジョイントは、一般的には、ラップさせる構成を採るが、固着する構成としてもよく、また補強体3として、一枚物を用いてもよい。
【0026】そして、本実施例の補強土工法を用いて施工した結果を、側壁体として土嚢を用いた従来工法との比較をすると、補強体(テンサー)を一層敷設した場合、従来例の場合、長さが50m、幅が10mの道路を施工するのに15日かかったのに対し、本実施例の場合は10日と、工期を5日間短縮することができた。これは、補強体の固定、側壁部を施工にかかる時間等に大きな施工時間差が生じたことによる。また、本実施例の場合、補強体が合成樹脂製枠体で形成されるブロック体と一体化され、そして該補強体の端部の定着状態が良好に保持され、補強体の敷設作業が軽量作業となり、熟練した専門化でなくても容易に施工できることが確認できた。
【0027】なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で変形実施できるものを含む。因みに、前述した実施例では、型枠を路床の左右に設置し、該左右の型枠間に路盤を形成する構成で説明したが、図9に示すように、路床の一側にのみ型枠を設置し、他側にはアースアンカー14で山等に直接固定する構成とすることもできる。また、前述した実施例では、各型枠の全てに補強体3を直接または間接的に配設した構成で説明したが、二段毎、三段毎等に補強体3を配設する構成としてもよい。
【0028】更に、前述した実施例では、補強体挿入部を型枠の後面上部に設けた構成で説明したが、後面中間部、前面中間部その他の型枠表面に上向き孔部を設け、該孔部を補強体挿入部とした構成としてもよい。また、図10に示すように、法面を補強する形態として実施することもできることは当然で、この場合は、型枠2として、前面上部と後面上部の両方に補強体挿入部5,5を有し、前面上部の補強体挿入部5では、法面の地盤を補強する補強体3が挿入一体化されて、法面の地盤中に該補強体を定着させ、また後面上部においては、前述した実施例と同様の構成としている。更に、型枠を路盤の上方位置まで積み重ね、該部位の型枠に防音壁等を形成させる形態としてもよい。
【0029】また、前述した実施例においては、補強体挿入部を型枠の後面上部に設けた、あるいは形成した構成で説明したが、該表面の他の箇所、例えば、上面、左右側面、底面、あるいは角部、隅部等に設けた構成としてもよい。更に、該挿入部は穿設孔であってもよい。また、前述した実施例においては、型枠を合成樹脂製型枠で説明したが、金属製、コンクリート製、板紙製等よりなる構成のものを用いてもよいことは当然である。
【0030】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の補強土工法によれば、補強網の端部を型枠の表面の一部に形成されている補強体挿入部に挿入した後、該型枠に生コンクリートを注入・充填することで、該補強体の端部を直接または間接的に一体化したコンクリートブロック体を得るようにして該補強体を定着するようにした工法であるので、該補強体を正確でかつ簡単に配設できると共に、併せて側壁等をも簡単に得ることができるという効果を有する。
【0031】また、本発明の補強土工法に用いる型枠によれば、内部に生コンクリートを・注入・充填することで、ブロック体を得られる形態の型枠であるので、型枠表面の一部に設けられている補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後に、生コンクリートを注入充填し、これを養生することによって、該補強体を一体化した構成を得ることができるという効果を有する。また簡単な作業でもって、マットレス施工と同様の作業ができ、また該補強体の定着作業を省略できるという効果をも有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の補強土工法の作業工程を示す概略断面図である。
【図2】 本補強土工法に用いる合成樹脂製型枠の正面図である。
【図3】 側面図である。
【図4】 平面図である。
【図5】 施工状態を示す側面図である。
【図6】 合成樹脂製型枠を積み重ねた状態の斜視図である。
【図7】 合成樹脂型枠の拡大斜視図と補強体挿入部に補強体を挿入した状態の拡大断面図である。
【図8】 補強体としてタイロッド継手を用いた場合の説明図である。
【図9】 他の実施例の断面図である。
【図10】 他の実施例の断面図である。
【符号の説明】
1・・・路床、2・・・合成樹脂製型枠、3・・・補強体、4・・・表表面、5・・・補強体挿入部(孔)、6・・・開口部、7・・・凸部、8・・・合成樹脂製型枠の周壁面、9・・・合成樹脂製型枠の下面、10・・・生コンクリート流下用孔、11・・・切り込み、12・・・鉄筋、13・・・路盤材、14・・・タイロッド、15・・・アンカー、16・・・継手
【図4】

【図9】

【図1】

【図2】

【図3】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図10】
