(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平7−18679
(43)【公開日】平成7年(1995)1月20日
(54)【発明の名称】路盤補強、盛土、法面補強等の補強土工法とコンクリートブロック擁壁用型枠
(51)【国際特許分類第6版】
   E02D 17/18        A 7505-2D
        29/02    309   7635-2D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】FD
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願平5−189223
(22)【出願日】平成5年(1993)6月30日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文



(57)【要約】 (修正有)
【目的】 暗渠排水管等を補強土外に引き出すことなく、また別途、排水設備を設けることなく、型枠設置工事をすることで排水設備を設置できる法面等の補強土工法とコンクリートブロック擁壁用型枠を提供する。
【構成】 表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底で、該底部にブロック積み重ね用嵌合部を有すると共にコンクリート流下もしくは溢出部を備え、かつ該表面の一部に補強網、等の補強体3を挿入する補強体挿入部5を有し、また側面外側の一部に複数個の水抜き用凹凸または突起部を有する型枠を、設置し、型枠の該補強体挿入部に補強体の端部を挿入した後、型枠内に生コンクリートを注入・充填して補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体とすると共に、補強体を補強土施工箇所に定着して補強土を得て、かつ補強土内の重力水等の水分を上記水抜き用凹凸介して排出する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】 補強土施工箇所の一側部に、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底で、該底部にブロック積み重ね用嵌合部を有すると共にコンクリート流下もしくは溢出部を備え、かつ該表面の一部に補強網、補強ロープ等の補強体を挿入する補強体挿入部を有し、また側面外側の一部に複数個の水抜き用凹凸または突起部を有する型枠を、該補強体挿入部が前記補強土施工箇所の他側部側に対向して設置すると共に、該型枠の該補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、該型枠内に生コンクリートを注入・充填して該補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体とすると共に、該コンクリートブロック体によって該補強体を前記補強土施工箇所に定着して補強土を得て、かつ該補強土内の重力水等の水分を上記水抜き用凹凸または突起部を介して排出し得ることを特徴とする路盤補強、盛土、法面補強等の補強土工法。
【請求項2】 表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底の型枠の上部に生コンクリート注入・充填用開口部を設け、該表面の一部に補強土施工用の補強体挿入部を設け、底部にブロック積み重ね用嵌合部とコンクリート流下もしくは溢出部を設け、側部外面に補強土施工面側より他面側に排水を誘導する複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路部を設けてなることを特徴とするコンクリートブロック擁壁用型枠。
【請求項3】 表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底の型枠の上部に生コンクリート注入・充填用開口部を設け、底部にブロック積み重ね用嵌合部とコンクリート流下もしくは溢出部を設け、側部外面に一面側より他面側に排水を誘導する複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路部を設けてなることを特徴とするコンクリートブロック擁壁用型枠。
【請求項4】 複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路部を、型枠の側面下部に設け、かつ該排水誘導路部の設置嵩に排水誘導方向に沿って低くなる傾斜を設けてなる請求項2または3に記載のコンクリートブロック擁壁用型枠。
【請求項5】 型枠の側面下部に凹部を形成し、該凹部に凸状部または突起部を設けて排水誘導路部を形成してなる請求項2乃至4に記載のコンクリートブロック擁壁用型枠。
【請求項6】 排水誘導路部を、補強土施工面側誘導路と、中間部誘導路、および他面側誘導路に分離し、該中間部誘導路を形成する隣接する水抜き用凹凸または突起部間隔を、補強土施工面側誘導路および他面側誘導路を形成する水抜き用凹凸または突起部間隔より狭間隔としてなる請求項2、4または5に記載のコンクリートブロック擁壁用型枠。



【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、路盤補強、盛土、法面、路床、路体補強等の補強土工法とコンクリートブロック擁壁用型枠に係り、より詳細には、路盤補強、盛土補強、法面補強等の補強土の施工をするに際して、暗渠排水管等を補強土外に引き出すことなく、路盤等の内部の重力水を排水できる補強土工法と、この補強土工法等に用いるコンクリートブロック擁壁用型枠に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、路盤補強、盛土補強、法面、路床、路体等の補強土工法としては、路盤補強、盛土補強等の補強土施工現場における路床上に補強網(網目構造体)を敷設し、該補強網の上に路盤材により路盤を設け、該路盤の表面を路面とする工法が知られている。そして、この工法によれば、補強網の網目で、その上下部位における土粒子のインターロッキンク(アンカリンク)効果によって、該補強網を路床、路盤の土とで一体化させるので、簡単な施工でもって、路盤の強化ができる。
【0003】しかし、この補強土工法の場合、次のような問題がある。すなわち、
■ 補強網の種類によっては、一層敷設、多層敷設の場合、該補強網の端部が補強工事中に捲れたりして、補強網が敷設されていない路床部位の生じることがある。
■ マットレス施工の場合は、路盤材を覆うための工事に多くの手数を要する。
■ 補強網の端部を固定するための手数を要する。
■ 路盤、盛土側部の固定に手数を要する。等の問題がある。
【0004】そこで、本発明者は、このような課題を解決した補強土工法を提案した。この工法は、『補強土施工箇所の一側部に、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底で、該底部にブロック積み重ね用嵌合部を有すると共にコンクリート流下もしくは溢出部を備え、かつ該表面の一部に補強網、補強ロープ等の補強体挿入部を有する型枠を、該補強体挿入部が前記補強土施工箇所の他側部側を向くようにして設置すると共に、該型枠の該補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、該型枠内に生コンクリートを注入・充填して該補強体の端部を直接または間接的に一体化したコンクリートブロック体とすると共に、該コンクリートブロック体によって該補強体を前記補強土施工箇所に定着させる構成』よりなる。
【0005】そして、この構成の場合、路盤補強、盛土補強、法面補強、路床補強、路体補強等の補強土の施工をするに際して、路床上に補強網の正確な敷設・張設ができ、かつ熟練性が要らず、施工期間を短縮でき、その作業性を向上させることができるという利点を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この補強土工法の場合、次のような難点の生じる場合のあることが分かった。すなわち、
■ 左右の型枠の凹凸よりなる接続部を嵌合して連接し、該型枠内にコンクリート充填して擁壁を形成し、該擁壁間に補強土を施工する構成であるため、該補強土中の重力水等の水分を外部に排水できない。
■ 別途、排水設備を設ける必要があるので、工事が複雑となる。すなわち、補強土施工前の段階で、排水設備を施工する必要があるので、補強土施工の工事期間が長くなる。
■ 排水設備のメンテナンスが難しい。等の問題が残る。
【0007】本発明は、上述したような問題に対処して創作したものであって、その目的とする処は、路盤補強、盛土補強、法面補強、路床補強、路体補強等の補強土の施工をするに際して、暗渠排水管等を補強土外に引き出すことなく、また別途、排水設備を設けることなく、型枠設置工事をすることで排水設備を設置でき、路盤等の内部の重力水を排水できる路盤補強、盛土補強、法面等の補強土工法とコンクリートブロック擁壁用型枠を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の路盤補強、盛土補強、法面等の補強土工法は、補強土施工箇所の一側部に、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底で、該底部にブロック積み重ね用嵌合部を有すると共にコンクリート流下もしくは溢出部を備え、かつ該表面の一部に補強網、補強ロープ等の補強体を挿入する補強体挿入部を有し、また側面外側の一部に複数個の水抜き用凹凸または突起部を有する型枠を、該補強体挿入部が前記補強土施工箇所の他側部側に対向して設置すると共に、該型枠の該補強体挿入部に補強体の端部を直接または間接的に挿入した後、該型枠内に生コンクリートを注入・充填して該補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体とすると共に、該コンクリートブロック体によって該補強体を前記補強土施工箇所に定着して補強土を得て、かつ該補強土内の重力水等の水分を上記水抜き用凹凸または突起部を介して排出し得る構成としている。
【0009】また、本発明のコンクリートブロック擁壁用型枠は、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底の型枠の上部に生コンクリート注入・充填用開口部を設け、該表面の一部に補強土施工用の補強体挿入部を設け、底部にブロック積み重ね用嵌合部とコンクリート流下もしくは溢出部を設け、側部外面に補強土施工面側より他面側に排水を誘導する複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路部を設けてなる構成としている。
【0010】また、本発明の他のコンクリートブロック擁壁用型枠は、表面をコンクリートブロック状に形成した中空有底の型枠の上部に生コンクリート注入・充填用開口部を設け、底部にブロック積み重ね用嵌合部とコンクリート流下もしくは溢出部を設け、側部外面に一面側より他面側に排水を誘導する複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路部を設けてなる構成としている。
【0011】また、本発明の他のコンクリートブロック擁壁用型枠は、前記発明において、複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路を、型枠の側面下部に設け、かつ該排水誘導路の設置嵩を補強土施工面側より他面側に向かって低くしてなる構成としている。また、型枠の側面下部に凹部を形成し、該凹部に凸状部または突起部を設けて排水誘導路部を形成してなる構成、更に、排水誘導路部を、補強土施工面側誘導路と、中間部誘導路、および他面側誘導路に分離し、該中間部誘導路を形成する隣接する水抜き用凹凸または突起部間隔を、補強土施工面側誘導路および他面側誘導路を形成する水抜き用凹凸または突起部間隔より狭間隔としてなる構成としている。なお、本明細書において、『生コンクリート』には、通常の生コンクリートの他に、コンクリートミルクをも含む。また、ここで、型枠としては、合成樹脂製、金属製、コンクリート製、板紙製等によって得ることができる各種のものを含む。
【0012】
【作用】本発明の補強土工法は、補強土工事現場における路床上に、補強網等の補強体を敷設すると共に、該補強体の端部に、内部にコンクリートを注入することによりコンクリートブロック体を形成する型枠を配し、かつ該補強体の端部を型枠の前面に形成されている補強体挿入用部に挿入した後、該型枠に生コンクリートを注入・充填することで、該補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体を得ることができると共に、隣接する型枠間に排水誘導路部が形成されるので、別途排水設備を設けることなく、かつ該補強体を正確でかつ簡単に配設でき、併せて側壁等をも得ることができるように作用する。
【0013】また、補強土工法に用いる型枠は、内部に生コンクリートを・注入・充填することで、ブロック体を得られる形態の型枠であり、型枠前部の補強体挿入用部に補強体の端部を挿入した後に、生コンクリートを注入充填し、これを養生することによって、補強体を一体化した構成を、補強土工法において具体化できるように作用し、かつ型枠側面に一面側より他面側に排水を誘導する複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路部が形成されているので、別途排水設備を設けることなく、型枠設置と同時に補強土中の重力水等の排水をスムーズに行うことが可能になる。
【0014】更に、排水誘導路部の設置嵩に傾斜を設けた型枠にあっては、該型枠の排水誘導路部に保持されながら、排水されるので、該排水誘導路が排水升の作用をすることになり、別途排水升を必要とすることなく、スムーズな排水を行うことができる。また排水誘導路部を、補強土施工面側誘導路と、中間部誘導路、および他面側誘導路に分離し、該中間部誘導路を形成する隣接する水抜き用凹凸または突起部間隔を、補強土施工面側誘導路および他面側誘導路を形成する水抜き用凹凸または突起部間隔より狭間隔とした構成にあっては,排水誘導路部において、排水のろ過作用が発揮されるように作用する。
【0015】
【実施例】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した実施例について説明する。ここに、
図1図11は、本発明の一実施例を示し、図1は本実施例の補強土工法の作業工程を示す概略断面図、図2は本実施例の補強土工法に用いる型枠の正面図、図3は側面図、図4は平面図、図5図3の部分拡大斜視図、図6は裏面図、図7図6の部分拡大図、図8は施工状態を示す側面図、図9は型枠を積み重ねた状態の斜視図、図10は型枠の拡大斜視図と補強体挿入部に補強体を挿入した状態の拡大断面図、図11は補強体としてタイロッド継手を用いた場合の説明図である。
【0016】本実施例の補強土工法は、路盤(路床、路体)を補強するための補強土工法であって、概略すると、■路床、路体整地工程、■型枠設置工程、■補強体配設工程、■生コンクリート充填工程、■路盤材配設工程、■次工程、の六工程よりなる。
【0017】−路床、路体整地工程−
本工程は、路床、路体1(路床1a、路体1b)を整地する工程である。この工程は、補強土工法を実施するための準備工程であって、後工程で使用する型枠2を設置し、かつ補強体3の配設、その他工事をスムーズに施工できるように路床、路体1を均らす工程である。
【0018】−型枠設置工程−
本工程は、路床、路体整地工程に均らされた路床、路体1の所定箇所に型枠2を設置する工程である。すなわち、型枠2,2・・を道路、鉄道をつくる左右の所定箇所に設置すると共に、複数段(通常、二段)積み重ね・設置する工程である。
【0019】型枠2は、図2図11に示すように、表面がコンクリートブロック形状と同一に形成された中空有底の平面矩形状の合成樹脂製、コンクリート製、金属製その他材料よりなる型枠であって、表表面(換言すれば、正面側表面)4には、コンクリートブロックと同様に模様等が形成され、上部には開口部6が形成され、また後面上部には補強体3の端部3a,3bを挿入するための補強体挿入部5が形成され、更に、底面には嵌合部を構成する凸部7が形成され、更に側面下部には排水誘導路8が形成されている。開口部6は、積み重ねる他の型枠2の凸部7と係合させ、また生コンクリートを注入充填させるための充填口である。また、凸部7は、積み重ねる他の型枠2の開口部6と係合させるための係合部で、型枠2の周壁面9に対して小さく、かつ下向きに突出した形状とされている。また、凸部7の表面、換言すれば、型枠2の底面9には、1個もしくは複数個の生コンクリート流下用孔(あるいは溢出孔)10が穿設されている。
【0020】ここで、流下用孔10は、コンクリートブロック自体の形状、形態によって相違するが、通常、30cm間隔程度に穿設、その大きさは、3〜10cm径程度とする。しかし、他の大きさ等を選択してもよい。また、型枠2の側面上部には、切り込み11が設けられている。切り込み11は、型枠2、2・・を横方向に繋ぐ鉄筋12を設置するための切り込みである。ここで、切り込み11は、V字型、U字型等他の形状としている。
【0021】また、型枠2の側面下部に形成される排水誘導路8は、図5に示すように、水抜き用凹凸部または突起部14によって形成されている。すなわち、型枠2の側面下部には、凹部15が形成されていて、該凹部15に複数個の凸状部よりなる水抜き用凹凸部14が設けられ、排水誘導路部8が形成されている。また、排水誘導路部8は、図6に示すように、補強土施工面側誘導路16と、中間部誘導路17、および他面側誘導路18に分離され、該補強土施工面側誘導路16と、中間部誘導路17、および他面側誘導路18の間には、排水溜用の空間部19,20が形成されている。そして、中間部誘導路17を形成する水抜き用凹凸部間隔aを、補強土施工面側誘導路16および他面側誘導路18を形成する水抜き用凹凸部間隔b,cより狭間隔とし、また補強土施工面側誘導路16を形成する水抜き用凹凸部間隔bを、他面側誘導路18を形成する水抜き用凹凸部間隔cより狭間隔とされている。これは、中間部誘導路17を形成する水抜き用凹凸部間隔aを狭間隔とすることによって、フィルター作用を発揮させることを考慮し、また他面側誘導路18を形成する水抜き用凹凸部間隔cを広間隔とすることによって、排水性能を良好にしたことによる。
【0022】なお、型枠2は、通常、工場で予め製作され、その材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、塩化ビニル樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂よりなる合成樹脂製のものが好ましく、この中でも、FRP等の耐候性、強度を備えたものがより好ましい。ところで、型枠2は、矩形状に限られることなく、円形、三角形状、その他多角形状体等であってもよく、通常、トラック等の輸送機関で輸送できる種々の大きさの範囲ものである。
【0023】そして、具体的には、型枠2a,2bを、路床、路体1の左右位置に補強体挿入部5、5が対向するように設置し、かつ同様にして、該設置箇所に沿って隣接して設置する。そして、型枠2a,2a間、型枠2b,2b間にそれぞれに排水誘導路部8を形成し、また該設置した下側に位置する型枠2a,2bに、更に型枠2a′,2b′をそれぞれ凸部7と開口部6とを介して積み重ねるようにしている。
【0024】−補強体配設工程−
本工程は、型枠2の補強体挿入部5に補強体3の端部3a,3bを直接または間接的に挿入・配設する工程である。すなわち、補強体3の両端部3a,3bを型枠3a・・・,3b・・・の補強体挿入部5に挿入し、また併せて、切り込み11、11・・に鉄筋12を挿入配置し、また縦方向にも生コンクリート流下用孔10を介して鉄筋12を立設・配置する工程である(なお、鉄筋の立設・配置は、前工程で行うこともある)。ここで、補強体3としては、前述した延伸プロセスによる合成高分子を原料とした土木用プラスチック高強度網を用い、通常、ポリプロピレン、あるいは高密度ポリエチレンを原料としたテンサー(三井石化産資(株)製の補強網材)、その他の合成樹脂製網体、繊維製網体、金属製網体を用い、該網体の端部を補強体挿入部5に挿入しやすいように部分的に裂いた構成としている。しかし、金属製、合成樹脂製、繊維製等のワイヤー,ロープその他の耐引っ張り材等を用いることもある。また、必要に応じて、板体、不織布等を用いてもよい。なお、補強体3として、例えば、該テンサーを用いない場合は、通常、タイロッド継手、すなわち、穴開プレート、ボルト、あるいは丸穴棒等の継手20を取り付けたアンカー21(図12参照、なお、図12では孔開プレートよりなる継手を用いている)を用いて、該アンカーを補強体挿入部5に挿入し、アンカー21、継手20等よりなるタイロッド継手等を介してワイヤー等の耐引っ張り材よりなる補強体3を間接的に挿入・配設するようにしている。
【0025】−生コンクリート充填工程−
本工程は、積み重ねた型枠2a,2a′・・,型枠2b,2b′・・内に生コンクリートを注入・充填してコンクリートブロック体を形成する工程である。すなわち、上側に位置する型枠2a′,2b′の開口部6より生コンクリートを注入して、該型枠2a′,2b′の生コンクリート流下用孔10を介して、該生コンクリートを下側に位置する型枠2a,2b内に充填し、該生コンクリートが上側に位置する型枠2a′,2b′の下部位置に達した状態で充填を終え、かつ補強体3の端部3a,3bを直接または間接的に型枠2内に一体化させる工程である。ここで、生コンクリートの強度は、通常のコンクリートブロックにおけるものと同等の強度のものを用いている。そして、型枠2、2・・内に充填したコンクリートを養生させ、型枠2、2・・と一体化させると共に、補強体3を一体化する。また、左右方向は切り込み11、11・・と鉄筋12を介してコンクリートが固化・一体化される。なお、型枠2の側面の切り込み11の下方部位に鉄筋12とコンクリートとが十分に包むようにするための開口部を設け、コンクリートの充填を確実にするようにしてもよい。
【0026】−路盤材配設工程−
本工程は、前工程でコンクリートブロック化された型枠2a,2b間に路盤材(土)123戻し、路盤を形成すると共に、補強体3をジョイントする工程である。そして、該路盤材23と路床1とは、型枠2a,2b間で、補強体3により一体化され、また路盤材23は、左右の型枠2a,2bによって、その移動が保持される。なお、本工程は、通常、前記養生工程と並行して施工するようにしている。
【0027】−次工程−
本工程は、前工程を繰り返して、補強体3を複層敷設する工程である。すなわち、前工程である■型枠設置工程、■補強体配設工程、■生コンクリート充填工程、■路盤材配設工程の各工程を繰り返すより、型枠2a・・、2b・・を順次、積み重ね、かつ補強体3,3・・を配設し、かつ該補強体3,3・・を型枠2,2・・内に一体化し、更に路盤材を配することで、補強体3,3・・を複層敷設し、所定の補強土を有する所定の路盤の道路等を得る。ここで、補強体3,3のジョイントは、一般的には、ラップさせる構成を採るが、固着する構成としてもよく、また補強体3として、一枚物を用いてもよい。
【0028】そして、本実施例の補強土工法を用いて施工した結果を、排水設備が良好に作用し、かつ補強土中の重力水がスムーズに排水誘導路部8より排水され、別途排水設備に要する工事が不要となり、その作業性が向上する。
【0029】なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で変形実施できるものを含む。因みに、前述した実施例では、型枠を路床の左右に設置し、該左右の型枠間に路盤を形成する構成で説明したが、図11に示すように、路床の一側にのみ型枠を設置し、他側にはアースアンカー24で山等に直接固定する構成とすることもできる。また、前述した実施例では、各型枠の全てに補強体3を直接または間接的に配設した構成で説明したが、二段毎、三段毎等に補強体3を配設する構成としてもよい。
【0030】更に、前述した実施例では、補強体挿入部を型枠の後面上部に設けた構成で説明したが、後面中間部、前面中間部その他の型枠表面に上向き孔部を設け、該孔部を補強体挿入部とした構成としてもよい。また、図13に示すように、法面を補強する形態として実施することもできることは当然で、この場合は、型枠2として、前面上部と後面上部の両方に補強体挿入部5,5を有し、前面上部の補強体挿入部5では、法面の地盤を補強する補強体3が挿入一体化されて、法面の地盤中に該補強体を定着させ、また後面上部においては、前述した実施例と同様の構成としている。更に、型枠を路盤の上方位置まで積み重ね、該部位の型枠に防音壁等を形成させる形態としてもよい。
【0031】また、前述した実施例においては、補強体挿入部を型枠の後面上部に設けた、あるいは形成した構成で説明したが、該表面の他の箇所、例えば、上面、左右側面、底面、あるいは角部、隅部等に設けた構成としてもよい。更に、該挿入部は穿設孔であってもよい。また、前述した実施例においては、型枠を合成樹脂製型枠で説明したが、金属製、コンクリート製、板紙製等よりなる構成のものを用いてもよいことは当然である。
【0032】更に、上述した実施例においては、型枠を補強土工法に用いる型枠として説明したが、一般的な擁壁を形成するための型枠として用いることができることは当然である。更に、法面におけるコンクリートブロックとして使用することもできる。また、排水誘導部は、型枠の両側面でなく、一側面にのみ配した構成としてもよい。更に、図14図15に示すように突起部で排水誘導部を形成した構成としてもよいことは当然である。この場合においても、突起部の間隔を変えることで、フィルター作用を良好にすることができる。
【0033】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の補強土工法によれば、補強網等の補強体を敷設すると共に、該補強体の端部に、内部にコンクリートを注入することによりコンクリートブロック体を形成する型枠を配し、かつ該補強体の端部を型枠の前面に形成されている補強体挿入用部に挿入した後、該型枠に生コンクリートを注入・充填することで、該補強体の端部を一体化したコンクリートブロック体を得ることができると共に、隣接する型枠間に排水誘導路部が形成されるので、別途排水設備を設けることなく、かつ該補強体を正確でかつ簡単に配設でき、併せて側壁等をも得ることができるという効果を有する
【0034】また、本発明の補強土工法に用いる型枠によれば、内部に生コンクリートを・注入・充填することで、ブロック体を得られる形態の型枠であり、型枠前部の補強体挿入用部に補強体の端部を挿入した後に、生コンクリートを注入充填し、これを養生することによって、補強体を一体化した構成を、補強土工法において具体化でき、また型枠側面に一面側より他面側に排水を誘導する複数個の水抜き用凹凸または突起部より形成される排水誘導路部が形成されているので、別途排水設備を設けることなく、型枠設置と同時に補強土中の重力水等の排水をスムーズに行うことが可能になるという効果を有する。
【0035】更に、排水誘導路部の設置嵩に傾斜を設けた型枠にあっては、該型枠の排水誘導路部に保持されながら、排水されるので、該排水誘導路が排水升の作用をすることになり、別途排水升を必要とすることなく、スムーズな排水を行うことができ、また排水誘導路部を、補強土施工面側誘導路と、中間部誘導路、および他面側誘導路に分離し、該中間部誘導路を形成する隣接する水抜き用凹凸または突起部間隔を、補強土施工面側誘導路および他面側誘導路を形成する水抜き用凹凸または突起部間隔より狭間隔とした構成にあっては,排水誘導路部において、排水のろ過作用を発揮できるという効果を有する。



【図面の簡単な説明】
図1】 本実施例の補強土工法の作業工程を示す概略断面図である。
図2】 本補強土工法に用いる合成樹脂製型枠の正面図である。
図3】 側面図である。
図4】 平面図である。
図5図3の部分拡大斜視図である。
図6】 裏面図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8】 施工状態を示す側面図である。
図9】 型枠を積み重ねた状態の斜視図である。
図10】 型枠の拡大斜視図と補強体挿入部に補強体を挿入した状態の拡大断面図である。
図11】 補強体としてタイロッド継手を用いた場合の説明図である。
図12】 他の実施例の断面図である。
図13】 他の実施例の断面図である。
図14】 他の実施例の側面図である。
図15図14の部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
1・・・路床、路体(1a・・・路床、1b・・・路体)2・・・型枠、3・・・補強体、4・・・表表面、5・・・補強体挿入部(孔)、6・・・開口部、7・・・凸部、8・・・排水誘導部、9・・・合成樹脂製型枠の下面、10・・・生コンクリート流下用孔、11・・・切り込み、12・・・鉄筋、20・・・継手、21・・・アンカー、23・・・路盤材、24・・・タイロッド、

図1

図2

図3

図4

図5

図7

図12

図6

図8

図9

図10

図11

図13

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図15