(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平9−14346
(43)【公開日】平成9年(1997)1月14日
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類第6版】
   F16F 15/04                 
   E04B  1/36                 
   E04H  9/02    331          
【FI】
   F16F 15/04        A 8917-3J
   E04B  1/36        Z 7121-2E
   E04H  9/02    331 Z        
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】FD
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願平7−186385
(22)【出願日】平成7年(1995)6月28日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文



(57)【要約】
【目的】 簡単な構成でもって多方向からの変位を吸収でき、かつ耐久性を備え、建築物、構築物、室内に設置されている電子装置、その他各種装置に適用できる免震装置を提供する。
【構成】 地震等の震動による異方向の変位を吸収させるための免震装置であって、平行する上板と下板との間に、側面視『く』字状に屈曲した屈曲連結板、または垂直板からなる震動吸収用連結板が形成されている鋼板等からなる震動吸収体を、ゴム板等の弾性体を介して上下方向に複数個、該震動吸収体の震動吸収用連結板の向きを水平方向にずらして連結した構成よりなる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】 地震等の震動による異方向の変位を吸収させるための免震装置であって、平行する上板と下板との間に、側面視『く』字状に屈曲した屈曲連結板、または垂直板からなる震動吸収用連結板が形成されている鋼板等からなる震動吸収体を、ゴム板等の弾性体を介して上下方向に複数個、該震動吸収体の震動吸収用連結板の向きを水平方向にずらして連結してなることを特徴とする免震装置。
【請求項2】 前記震動吸収体が、上下方向に2個連結されていて、該上下の震動吸収体の震動吸収用連結板の向きを水平方向に90°ずらしている請求項1または2に記載の免震装置。
【請求項3】 前記震動吸収体を形成する、前記上板と前記下板、および前記震動吸収用連結板とが形成する空間部に硬質弾性体を設けている請求項1〜3の何れか1項に記載の免震装置。



【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、免震装置に係り、より詳細には、地震等の震動による異方向の変位を吸収させることができる建築物、構築物、室内に設置されている電子装置、その他各種装置に適用できる免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】地震等の震動を吸収させるための免震手段としては、従来から、種々のものがあるが、一般的には、例えば、建築物に適用されている免震装置の場合、コンクリート基礎と土台との間に弾性体を介在させ、該弾性体によって、その震動を吸収させる構成が多い。しかし、この構成の場合、地震等の震動による特定方向からの変位を吸収することはできるものの、多方向からの変位を吸収することが難しい。
【0003】そこで、近年では、コンクリート基礎と土台との間に、ベアリングと弾性体(スプリングやオイルダンパ)を介在させ、該ベアリングと弾性体によって、異なる方向からの変位を吸収させることで、建築物の揺れを軽減させる構成のものが提案されている(例えば、実開昭62−173464号公報参照)。このような免震装置の場合、多方向からの変位を同時に吸収できるため、複合的な地震や震動に対応できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した免震装置の場合、次のような課題がある。すなわち、
■ ベアリングで支承する構造で、該ベアリングに建築物の重量がかかることになるため、そのベアリングユニットの構成が複雑になる。
■ 水平方向の変位が、全てベアリングにかかるため、該ベアリングの耐久性が低下しやすい。
■ また前記ベアリングおよび弾性体に直接、前記コンクリート基礎からの全震動が伝達されるため、該震動の一部がベアリングおよび弾性体によって吸収されるものの、十分な吸収ができない。
等の課題がある。
【0005】本発明は、以上のような課題に対処して創作したものであって、その目的とする処は、簡単な構成でもって多方向からの変位を吸収でき、かつ耐久性を備え、建築物、構築物、室内に設置されている電子装置、その他各種装置に適用できる免震装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての請求項1の免震装置は、地震等の震動による異方向の変位を吸収させるための免震装置であって、平行する上板と下板との間に、側面視『く』字状に屈曲した屈曲連結板、または垂直板からなる震動吸収用連結板が形成されている鋼板等からなる震動吸収体を、ゴム板等の弾性体を介して上下方向に複数個、該震動吸収体の震動吸収用連結板の向きを水平方向にずらして連結してなる構成としている。
【0007】請求項2の免震装置は、前記請求項1の免震装置において、前記震動吸収体が、上下方向に2個連結されていて、該上下の震動吸収体の震動吸収用連結板の向きを水平方向に90°ずらしている構成としている。請求項3の免震装置は、いる請求項1または2の免震装置において、前記震動吸収体を形成する、前記上板と前記下板、および前記震動吸収用連結板とが形成する空間部に硬質弾性体を設けている構成としている。
【0008】
【作用】本発明の免震装置は、従来の免震装置と同じく、建築物に使用する場合、コンクリート基礎と土台との間に取り付けることで、地震等の震動による、特に水平方向の変位を吸収することができる。そして、本発明の請求項1の免震装置は、震動吸収用連結板の向きの異なる震動吸収体を上下方向に弾性体を介して複数個連結しているので、上下方向の大きい震動によるエネルギーを震動吸収用連結板の塑性変形により吸収でき、また該震動吸収体間に介在されている弾性体によって、左右方向の震動、上下方向の小さい震動によるエネルギーを吸収することができる。
【0009】請求項2の免震装置は、前記上下の震動吸収体の震動吸収用連結板の向きを水平方向に90°ずらして連結しているので、簡単な構成でもって、異なる方向からの変位を確実に吸収できる。また請求項3の免震装置は、上板と前記下板、および前記震動吸収用連結板とが形成する空間部に硬質弾性体を設けているので、この硬質弾性体によって、前記コンクリート基礎から伝達された震動を軽減できる。
【0010】
【実施例】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した実施例について説明する。ここに、
図1図3は、本発明の一実施例を示し、図1は免震装置の斜視図、図2は側面図、図3は弾性体の平面図である。
【0011】本実施例の免震装置は、建築物や構築物のコンクリート基礎と土台との間に、それぞれ弾性体を介して取り付けて、地震等の震動による多方向からの変位を吸収させ得る免震装置であって、概略すると、図1図2に示すように、下部震動吸収体1と、上部震動吸収体2、および両震動吸収体1,2の間に介在させている弾性体3から構成されている。
【0012】下部震動吸収体1は、押し出し成形等による一体化された上板4と下板5および震動吸収用連結体6から構成され、換言すれば、H型鋼の連結板部分が屈曲した形状からなる。この上板4と下板5は、平面四角形状の鋼板からなり、周囲に4個のボルト孔7,7・・、8,8・・が穿設され、上板4は、弾性体3に連結され、下板5はコンクリート基礎(図示せず)に連結できる構成とされている。震動吸収用連結体6は、側面視が『く』字状の鋼板からなる屈曲連結板で形成され、その上端は、上板4の底面中央と繋がっていて、また下端は下板5の上面中央と繋がっている。
【0013】ここで、屈曲連結板6は、その屈曲先端aが、上板4と下板5の中間部に位置し、その屈曲角度αが、45°≦α<180°、好ましくは150°〜175°に形成されている。しかし、これ以外の角度でもよく、また垂直板であってもよい。これは、この屈曲連結板6が、震動吸収用連結板であり、上下方向(垂直方向)の大きい震動によるエネルギーを塑性変形によって吸収させることにあるからである。
【0014】ところで、この下部震動吸収体1は、一般的な、H型鋼と同程度の寸法であって、ここでは、上板4と下板5の板厚を、10mm程度とし、屈曲連結板6の板厚を、7mm程度の形態のものを用いている。しかし、この寸法形態は、適用する建築物や構築物等によって、任意のものを用いることができる。
【0015】下部震動吸収体1の上側には弾性体3を介して上部震動吸収体2が連結されている。上部震動吸収体2は、下部震動吸収体1と同じく、上板9、下板10、および屈曲連結板11とから構成されている。下部震動吸収体1と異なるのは、屈曲連結板10の屈曲向きが、図1に示すように、90°ずれた構成とされている点である。すなわち、上部震動吸収体1と下部震動吸収体2は、その向きが直角に配置された構成となっている。そして、上板9、下板10には、それぞれボルト孔12,12・・、13,13・・が穿設されていて、下部震動吸収体1の下板5に、弾性体3を介してボルト孔7,7・・、12,12・・を通じてボルト・ナット(図示せず)によって締め付け連結されている。
【0016】弾性体3は、低摩擦性のゴムやスプリングで形成されていて、下部震動吸収体1と上部震動吸収体2との間で、コンクリート基礎からの震動による変位を吸収させ、更にクッション性を付与することで、垂直方向(上下方向)への変位を吸収できる構成とされている。すなわち、弾性体3は下部震動吸収体1の上板4に形成されているボルト孔7,7・・に対応する個所にボルト孔14,14・・が穿設される。また弾性体3の中央部分には、該弾性体と異質の硬度をもつ、例えば、鉛等の比重の重い異種硬性体15が設けられている。この構成とすることで、この硬度の異なる異種硬性体15を支点にして上下、あるいは左右の揺れ(エネルギー)を、いっそう吸収できる。ここで、弾性体3は、その厚みが、下部震動吸収体1の上板4,下板5と同程度の大きさ、厚みとされている。
【0017】本実施例の免震装置は、下部震動吸収体1と上部震動吸収体2を、その向きを直角になるように配すると共に、弾性体3を介して、ボルト・ナットを用いて締め付け・固定することで作製する。そして、この免震装置を、コンクリート基礎上に弾性体を介して配置し、該コンクリート基礎と下部震動吸収体1の下板4をボルト・ナット等によって連結し、また上部震動吸収体2の上板9に弾性体を介して土台とボルト・ナット等によって連結して用いる。
【0018】そして、地震等の震動があると、本実施例の免震装置は、その屈曲連結板6,11の向きが直角に配置した状態となるように上部震動吸収体1と下部震動吸収体2が上下方向に接続されているので、この震動吸収体1,2によって、上下方向の大きい震動によるエネルギーを塑性変形で吸収し、また震動吸収体1,2を接続する弾性体3により、水平方向の震動、および上下方向の小さい震動によるエネルギーを吸収することができる。また、ベアリング等を用いていないので、その構成が簡単となり、その設置が容易となる。
【0019】なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で変形実施できる構成を含む。因みに、図4に示すような構成としてもよい。すなわち、前述した実施例の免震装置において、上下のそれぞれの震動吸収体20を形成する上板21と下板22および屈曲連結板23とが形成する空間部24に、硬質ゴム等の弾性体25をはめ込み、これを外側から鉄板等の外板26で覆い、かつその中間部をボルト・ナット27によって、締め付け・固定した構成としてもよい。この構成の場合は、この弾性体25によって、免震効果をいっそう向上させることができる。また、前述した実施例においては、向きを90°ずらした震動吸収体を上下に設けた構成で説明したが、該震動吸収体を3個以上連結した構成としてもよい。この場合は、各震動吸収体の向きを、該震動吸収体の個数に対応した角度で連結する必要がある。すなわち、例えば、3個連結する場合は、60°間隔で連結する。なお、この場合、それぞれの上板、下板は、円板状のものが好ましい。
【0020】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の請求項1の免震装置によれば、屈曲連結板等の震動吸収用連結板の向きの異なる震動吸収体を上下方向に弾性体を介して複数個連結しているので、該震動吸収用連結板によって、上下方向の大きい震動によるエネルギーを塑性変形で吸収でき、また前記弾性体によって、水平方向の震動、および上下方向の小さい震動によるエネルギーを吸収できることから、地震等の震動が生じても、該地震による揺れによる被害を最小限に押さえることができるという効果を有する。
【0021】請求項2の免震装置によれば、請求項1の効果に加えて、前記上下の震動吸収体の屈曲連結板等の震動吸収用連結板の向きを水平方向に90°ずらして連結しているので、簡単な構成でもって、異なる方向からの変位を確実に吸収でき、かつその取り付けが容易となるという効果を有する。
【0022】請求項3の免震装置によれば、請求項1、2の効果に加えて、上板と前記下板、および前記震動吸収用連結板とが形成する空間部に硬質弾性体を設けているので、コンクリート基礎等の設置する下部構造体から伝達された震動を軽減できるという効果を有する。



【図面の簡単な説明】
図1】本発明の一実施例を示す免震装置の斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3】弾性体の平面図である。
図4】本発明の他の実施例の免震装置における震動吸収体の断面図である。
【符号の説明】
1・・・下部震動吸収体、2・・・・上部震動吸収体、3・・・弾性体、4・・・上板、5・・・下板、6・・・震動吸収用連結板(屈曲連結板または垂直板)、7,8・・・ボルト孔、9・・・上部震動吸収体の上板、10・・・下板、11・・・屈曲連結板、12,13・・・ボルト孔、14・・・弾性体のボルト孔、15・・・大径の震動吸収孔、20・・・震動吸収体、21・・・上板、22・・・下板、23・・・震動吸収用連結板(屈曲連結板または垂直板)、24・・・空間部、25・・・弾性体、26・・・鉄板等の外板、27・・・ボルト・ナット

図1

図2

図3

図4