(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平9−165932
(43)【公開日】平成9年(1997)6月24日
(54)【発明の名称】駐車装置
(51)【国際特許分類第6版】
E04H 6/06
【FI】
E04H 6/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】FD
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願平8−274019
(62)【分割の表示】特願平4−207367の分割
(22)【出願日】平成4年(1992)7月9日
(31)【優先権主張番号】特願平4−79257
(32)【優先日】平4(1992)2月29日
(33)【優先権主張国】日本(JP)
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【課題】 その構成と、操作が簡単で、駐車用水平面を形成・造成することなく、車両を水平状態に駐車できる傾斜地用駐車装置、上下段ともに車両の出入をスムーズに行えるようにした多段駐車装置を提供する。
【解決手段】 車両載置用可動床を保持するための支柱として、弧状または弓状に曲がった湾曲支柱を用い、該湾曲支柱のならい曲面に沿って該車両載置用可動床を上下動させ得る手段を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両載置用可動床を保持するための支柱として、弧状または弓状に曲がった湾曲支柱を用い、該湾曲支柱のならい曲面に沿って該車両載置用可動床を上下動させ得るようにしたことを特徴とする駐車装置。
【請求項2】 傾斜地に適した駐車装置であって、車両載置用可動床を保持するための支柱として、該傾斜地の傾斜方向に弧状または弓状に曲がった湾曲支柱を用い、該湾曲支柱のならい曲面に沿って上下動させ得る請求項1に記載の駐車装置。
【請求項3】 車両載置用可動床が、湾曲支柱の湾曲方向側部または湾曲方向外部あるいは湾曲方向内部に設けられ、該湾曲支柱のならい曲面に沿って上下動する請求項1または2に記載の駐車装置。
【請求項4】 支柱の湾曲度が、車両駐車状態における車両載置用可動床と水平面または路面とが平行状態となるようにした請求項1,2または3に記載の駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、駐車装置に係り、より詳細には、簡単な構成でもって、傾斜地での駐車や、多段駐車を容易に行える駐車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、駐車装置としては、種々の構成のものが提案されている。しかし、その構成が複雑なものが多く、製作上、操作上の観点より手軽に設置することができないのが現状である。このような点に鑑み、本発明者は、先に、『車両載置用の可動床の端部側に角形鋼管の中にコンクリート等を詰めて補強した支柱等よりなる角形支柱を立設して該可動床を水平状態に保持し、かつ該可動床を該角形支柱に沿って上下動させる立体駐車装置』を提案している。
【0003】そして、この構成の場合、駐車装置自体の構成を簡単にできると共に、その構成部品を少なくできると共に、狭いスペースでもって、複数台の車両を駐車できる駐車装置を提供できるという利点を有する。また、多段駐車できる簡易な構成としては、下段駐車部を半地下とし、下段と上段の駐車出入路を扉状とすることで、下段に駐車している車両の除けることなく、該上段に車両の出入を行えるようにした構成とされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような駐車装置を含め、従来の駐車装置の場合、傾斜地への設置や、他段構成としての設置に際しては、次のような課題の解決が図れない。すなわち、
−傾斜地に設置する場合−
■ 傾斜地に設置する場合、車両が傾斜地の勾配に対応する傾斜状態で駐車することになるので、安定性が悪く、地震、突風、人間の不注意によるサイドブレーキの掛け忘れによって、転落等の危険性がある。
■ 駐車用水平面の形成・造成が必要である。
■ 支柱を傾斜地に対して鋭角状に設置する構成となるので、土台構造を大きくする必要があり、設置コストが高くなる。
【0005】−多段駐車構成とする場合−
■ 上段と下段の駐車を行うための扉状駐車出入路が必要となる。
■ 上段の車両載置用可動床の下動位置を、下段の駐車車両の高さ以上の位置とする必要があるので、該上段の車両載置用可動床への車両の出入が難しい。
等の問題がある。
【0006】本発明は、上述した問題点に対処して創作したものであって、その目的とする処は、その構成と、操作が簡単で、駐車用水平面を形成・造成することなく、車両を水平状態に駐車できる傾斜地用駐車装置、上下段ともに車両の出入をスムーズに行えるようにした多段駐車装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そして、上記目的を達成するための手段としての本発明の請求項1の駐車装置は、車両載置用可動床を保持するための支柱として、弧状または弓状に曲がった湾曲支柱を用い、該湾曲支柱のならい曲面に沿って該車両載置用可動床を上下動させ得るようにした構成よりなる。
【0008】また、本発明の請求項2〜4の駐車装置は、前記発明において、■傾斜地に適した駐車装置であって、車両載置用可動床を保持するための支柱として、該傾斜地の傾斜方向に湾曲した支柱を用い、該湾曲支柱のならい曲面に沿って上下動させ得る構成、■車両載置用可動床が、湾曲支柱の湾曲方向側部または湾曲方向外部あるいは湾曲方向内部に設けられ、該湾曲支柱のならい曲面に沿って上下動する構成よりなる。
【0009】
【作用】本発明の駐車装置は、車両載置用可動床を保持するための支柱を弧状または弓状に曲がった支柱としているので、傾斜した敷地、段差を有する敷地等であっても、その整面をする必要なく、簡単に設置することができるように作用する。また、車両載置用可動床を湾曲支柱のならい曲面に沿って上下動させるようにしているので、該車両載置用可動床よりの出入を容易に行えるように作用する。
【0010】また、傾斜地に設置する場合、湾曲支柱を該傾斜地の傾斜方向に沿って湾曲状態となるように設置するようにしてので、該車両載置用可動床を該支柱の湾曲部分に沿って上下動させることで、該車両載置用可動床を水平状態とすることができ、車両を水平に安定した状態で駐車できるように作用する。
【0011】更に、多段構成とする場合、上段に駐車するための車両載置用可動床が、下動位置では、傾斜状態となり、また上動停止状態では水平状態となるように連続的に上下動するので、上段車両の有無に係わらず、下段の車両をスムーズに出入させることができるように作用する。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した実施例について説明する。ここに、図1〜図4は、本発明の第1実施例を示し、図1は設置状態の側面図、図2は可動床を上動させた状態の側面図、図3は水平方向断面図、図4は可動床保持部の部分拡大断面図、図5は、本発明の第2実施例の側面図、図6〜図7は、本発明の第3実施例を示し、図6は設置状態の側面図、図7は使用状態を説明するための側面図である。
【0013】−実施例1−
本実施例の駐車装置は、二段式の駐車装置であって、概略すると、車両載置用可動床1と角形支柱2および可動床駆動部3の三つの部分より構成され、角形支柱2が弧状角型支柱よりなり、該角形支柱2に車両載置可動床1を片持保持し、可動床駆動部3を介して上下動させ得るように構成されている。
【0014】車両載置用可動床1は、可動台(可動枠)4の側端中央部で支柱2と係合する可動床保持部5を有し、また上面に車両の車輪を載せる二条の車輪載置台6を有している。可動枠4は鋼材よりなるフレームで形成され、車輪載置台6を固定・保持する構成である。可動床保持部5は、前後の可動枠4の端部間を車輪載置台6に平行に繋ぐ連結材4a,4bと、ローラー保持枠9とより構成され、ローラー保持枠9にはガイドローラー7,7、8,8が設けられ、角形支柱2と係合するように構成されている。ローラー保持枠9は、角形支柱2の周囲を被嵌し、かつ上下動自在の角形筒体よりなる枠体で形成され、該枠体の可動台4側に前側ガイドローラー7,7を、逆方向に後側ガイドローラー8,8を備えている。
【0015】また、ローラー保持枠9の内側で、該ローラー7,7、8,8の設けられていない角部分には振止10、10・・が設けられている。特に、それぞれローラー7,7または8,8と同一平面上の逆側の角部分に設けられている。これによって、ローラー7、8の設けられていない箇所でのクリアランスの存在による振れを防止するようにしている。また、ローラー保持部5には可動床駆動部3を構成するチェーン(ワイヤー、ロープを含む)11を取り付けるための係合部12を備えている。ここで、ガイドローラー7,7、8,8としては、ベアリング16を用いている。しかし、他の構成のローラーを用いてもよい。
【0016】角形支柱2は、内部にコンクリートを充填した一本の角形鋼管で形成され、かつ車両載置用可動床1側に内湾曲する弧状角形支柱であって、車両載置用可動床1の可動台(可動枠)4の側端中央で、かつローラー保持枠9の内側に立設されている。すなわち、車両載置用可動床1の端部に対して角形支柱2を45°の角度に配置され、かつ角形支柱2の弧状形状の最大凹部2aに、車両載置用可動床1を移動させた際に、該車両載置用可動床1が水平面を形成する弧状とする。従って、傾斜地の勾配に応じて、適宜、好ましい曲面(湾曲)形状とする。また角形支柱1の前側角部12は、可動床保持部5の前側ガイドローラー7、7で左右より挟持され、また後側角部13は後側ガイドローラー8、8で左右より挟持されている。そして、両ガイドローラー7,7、8,8が両角部13、14に沿って、可動床駆動部3の駆動によって上下動でき、ローラー保持枠9を介して車両載置用可動床1を上下動できるように構成されている。
【0017】可動床駆動部3は、ウィンチ15と巻き上げ用のチェーン11により形成されていて、ウィンチ4を駆動させることにより、チェーン11を介して、可動床1を上下動させ得るように構成されている。ここで、本実施例では、可動床駆動部3を、ウィンチ15と巻き上げ用のチェーン11により構成したもので説明したが、油圧シリンダ、空圧シリンダ、その他、可動床を上下動させることができる駆動機構であれば、どのような機構であってもよい。
【0018】本実施例の二段式駐車装置は、傾斜地の勾配に応じた角形支柱2を用い、該角形支柱2が傾斜地の傾斜方向に沿って湾曲するように配し、基礎にアンカーボルトで固定し、あるいは建築物に固定物がある場合は、該固定物に固定することで設置することができる。そして、その使用方法は、可動床駆動部3のウィンチ15を駆動させることにより、可動床1のローラー保持枠9に設けられ、かつ角形支柱2の前側角部13と後側角部14に上下動自在に嵌合する前側ガイドローラー7,7と後側ガイドローラー8,8が床面17まで下動させた状態で、可動床1に車両を載置し、再び上動させた後、空所となった床面17に車両を駐車できる。
【0019】ここで、可動床1は、角形支柱2の弧状形状が『ならい曲面』を形成することより、この曲面に沿って移動し、また前側角部13と後側角部14とに、それぞれガイドローラー7,7、8,8を配し(当接挟持配置)、保持されているので、駐車状態時に、該駐車車両を水平状態に維持でき、かつ駐車装置自体の構成が簡単となると共に、その構成部品を少なくできる。また、角形支柱2の前側角部13と後側角部14とにそれぞれ嵌合して角形支柱2の対角線上の角部を前後方向より挟持する前後のガイドローラー7,7、8,8の位置を、後側ガイドローラー8,8の位置が前側ガイドローラー7,7の位置より上方側に位置するようにして、可動床1を保持するようにしているので、可動床1の摺動移動状態を一層安定させ得るように作用する。
【0020】−実施例2−
本実施例の駐車装置は、実施例1において、一段駐車装置とした構成で、かつ可動床1を角形支柱2の湾曲方向側部に設けた構成よりなる。すなわち、角形支柱2の弧状に沿って、可動床1が上下動し、該可動床1が下動した状態の時、その出入口18が傾斜面と同一状面に位置して、車両の出入をスムーズに行えるようにし、また、保管する場合は、該可動床1を上動させることで、該可動床1が角形支柱の弧状に沿って、水平状態となるように構成されている。
【0021】そして、この構成の場合、傾斜地や、路面(設置面)が整面できないような個所に設置することで、車両の保管時に水平状態を保持でき、かつ該車両の出入をスムーズに行えるという利点を有する。ここで、角形支柱の弧状は、その傾斜地等の設置面の状況によって異なるが、その曲率半径を、1000〜7000mm程度としている。しかし、適宜、他の半径としてもよい。また、車両の進入口は傾斜地等の上側でも下方側でもよい。
【0022】−実施例3−
本実施例の駐車装置は、実施例2において(傾斜地や段差等の設置面でなくてもよい)、二段駐車装置とした構成よりなる。すなわち、下段の車両駐車部19を半地下状態とし、かつ該車両駐車部19の車両出入部20を傾斜させた構成よりなり、また上側に車両駐車させるための可動床1が下動停止した際、その車両出入口21が設置路面22に位置する構成とされている。
【0023】そして、この構成の場合、可動床1が下動停止位置では、傾斜状態となり、また上動停止状態では水平状態となるように連続的に上下動するので、該可動床1への車両の有無に係わらず、下段の車両をスムーズに出入させることができ、また半地下を浅くすることもできるという利点を有する。
【0024】なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で変形実施できるものを含む。因みに、前述した実施例においては、車両駐車用可動床を一個有する駐車装置として説明したが、該可動床を複数個設け、三段以上駐車装置とすることもできる。
【0025】また、支柱の湾曲形状は、傾斜地の傾斜方向に沿って傾斜地下方側に突出する湾曲する形状に限られるものでなく、必要に応じて、傾斜地上方側に突出する湾曲する形状としてもよい。また支柱は、一本の形態に限られるものでなく、複数本、例えば、可動床の側端両角隅部にそれぞれ設置するようにした構成、可動床の左右に設置した構成としてもよい。ところで、二つ以上の異なる湾曲を組み合わせた構成の支柱や、部分的に湾曲する支柱であってもよい。
【0026】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の駐車装置によれば、車両載置用可動床を保持するための支柱を弧状あるいは弓状に湾曲する支柱としているので、傾斜した敷地、段差を有する敷地等であっても、その整面をする必要なく、簡単に設置することができ、また、前記車両載置用可動床を湾曲支柱のならい曲面に沿って上下動させるようにしているので、該車両載置用可動床よりの出入を容易に行え、また車両保管の際には、該車両を水平状態とすることができるという効果を有する。
【0027】また、本発明の駐車装置によれば、傾斜地に設置する場合、湾曲支柱を該傾斜地の傾斜方向に沿って湾曲状態となるように設置するようにしてので、該車両載置用可動床を該支柱の湾曲部分の倣い曲面に沿って上下動させることで、該車両載置用可動床を水平状態とすることができ、車両を水平に安定した状態で駐車できるという効果を有する。
【0028】更に、本発明の駐車装置によれば、多段構成とする場合、上段に駐車するための車両載置用可動床が、下動位置では、傾斜状態となり、また上動停止状態では水平状態となるように連続的に上下動するので、上段車両の有無に係わらず、下段の車両をスムーズに出入させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の設置状態の側面図である。
【図2】 図1の可動床を上動させた状態の側面図である。
【図3】 図1の横方向断面図である。
【図4】 図1の可動床保持部の部分拡大断面図である。
【図5】 第2実施例の設置状態の側面図である。
【図6】 第3実施例の設置状態の側面図である。
【図7】 第3実施例の使用状態を説明するための側面図である。
【符号の説明】
1・・・車両載置用可動床、2・・・角形支柱、2a・・・最大凹部、3・・・可動床駆動部、4・・・可動台(可動枠)、4a,4b・・・連結材、5・・・可動床保持部、6・・・車輪載置台、7・・・前側ガイドローラー、8・・・後側ガイドローラー、9・・・ローラー保持枠、10・・・振止、11・・・チェーン、12・・・係合部、13・・・前側角部、14・・・後側角部、15・・・ウィンチ、16・・・ベアリング、17・・・床面
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】
