(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平9−195639
(43)【公開日】平成9年(1997)7月29日
(54)【発明の名称】扉
(51)【国際特許分類第6版】
   E06B  5/00                 
         3/70                 
         7/32                 
【FI】
   E06B  5/00        E        
         3/70        Z        
         7/32                 
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】FD
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願平8−29815
(22)【出願日】平成8年(1996)1月23日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文



(57)【要約】
【課題】 地震や火災等の非常時に、扉が変形し、あるいは/および扉を開く側に落下物等の障害物が存在して、扉が開閉不能状態になった際、該扉を形成するパネル部分を破ることによって容易に脱出でき、かつ通常時は、外部からの侵入を防止することができる非常用扉を提供する。
【解決手段】 扉内外面の一部または全部を破壊容易性の板体または着脱自在の板体からなる扉内外面パネルで形成し、該扉内外面パネル間の空隙内に一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材を取り外しまたは弛緩自在に張り巡らした線材張り巡らし部を設けた手段を有する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】 扉内外面の一部または全部を破壊容易性の板体または着脱自在の板体からなる扉内外面パネルで形成し、該扉内外面パネル間の空隙内に一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材を取り外しまたは弛緩自在に張り巡らした線材張り巡らし部を設けてなることを特徴とする扉。
【請求項2】 前記線材張り巡らし部を形成する線材の一部を扉の内面側パネルの表面または/および外面側パネルの表面に露出している請求項1に記載の扉。
【請求項3】 前記線材張り巡らし部が、線材をループ状に配した中央ループ部と、該中央ループ部と扉外枠との間に前記線材を張り巡らした線材張設部とを有する請求項1または2に記載の扉。
【請求項4】 前記扉内外面に破壊容易性の板体または着脱自在の板体からなる内外面単位パネルを所定間隔で複数個設け、該各内外面単位パネル間の空隙内に一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材を取り外しまたは弛緩自在に張り巡らした線材張り巡らし部を設けてなる請求項1〜3の何れか1項に記載の扉。



【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種の扉(ドア)に係り、より詳細には、地震や火災等の非常時に、扉が変形し、あるいは/および扉を開く側に落下物等の障害物が存在して、扉が開閉不能状態になった際、該扉を形成するパネル部分を破ることによって容易に脱出でき、かつ通常時は、外部からの侵入を防止することができる非常用扉に関する。
【0002】
【従来の技術】ドア、引き戸等の各種扉は、通常、矩形状に形成された扉周縁枠と内部補強材で形成された枠組の両面にパネルを取り付けた構造からなる。一般的に、このような各種扉は、用途に応じて、建築物の内部の仕切り用の扉と、建築物内に出入りするための扉の2種類に分類できる。そして、前者の扉の場合は、扉を形成するパネル部分が木製・合成板材あるいはガラス板等の比較的壊れ易い板材で形成されている。これに対して、後者の扉の場合は、扉を形成するパネル部分が鋼板あるいは軽金属板で形成されている。
【0003】ところで、地震や火災等の災害が発生した場合、振動等によって建築物自体が傾いたり、壁や柱あるいは桁がずれて、前記扉の開閉ができなくなるケースが多発する。また、扉を嵌め込むための扉嵌合用外枠と扉周縁枠との間、あるいは建築物の壁と扉嵌合用外枠との間に緩衡部分を設けて扉あるいは扉嵌合用外枠の変形を防いだとしても、該扉を開く方へ落下物等の障害物がある場合は、該扉の開閉ができない。このような場合、建築物の室内に閉じ込められて、脱出ができないという自体が起こり、そのため、扉を人手によって、室内側あるいは室外側から壊して、脱出、あるいは救出することになる。後者の扉を形成するパネル部分が鋼板等で形成されたものの場合は、扉のパネル部分を壊すことが難しいが、前者の扉にあっては、該パネル部分を壊すことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した『扉内外面パネルを破壊容易性の板体で形成し、該扉内外面パネル間に空隙を有する扉』の場合、次のような問題がある。すなわち、
■ 該空隙部に強固な補強材からなる骨組が取り付けられているため、扉内外面パネルを壊すことができても、該扉に脱出、あるいは救出するだけの大きい孔を開けることが難しい。
■ 扉内外面パネルと補強材が強固に固定されているため、該パネルを壊すためには、大きな破壊力が必要となる。
■ 前記空隙部に補強材がない扉の場合は、扉内外面パネルを壊すことにより、外部からの侵入が容易であり、防犯上、好ましくない。等の課題がある。
【0005】本発明は、以上のような課題に対処して創案したものであって、その目的とする処は、地震や火災等の非常時に、扉が変形し、あるいは/および扉を開く側に落下物等の障害物が存在して、扉が開閉不能状態になった際、該扉を形成するパネル部分を破ることによって容易に脱出でき、かつ通常時は、外部からの侵入を防止することができる非常用扉を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の請求項1の扉は、扉内外面の一部または全部を破壊容易性の板体または着脱自在の板体からなる扉内外面パネルで形成し、該扉内外面パネル間の空隙内に一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材を取り外しまたは弛緩自在に張り巡らした線材張り巡らし部を設けてなる構成としている。
【0007】本発明の請求項2の扉は、前記請求項1の扉において、前記線材張り巡らし部を形成する線材の一部を扉の内面パネルの表面または/および外面パネルの表面に露出している構成としている。また、請求項3の扉は、前記線材張り巡らし部が、線材をループ状に配した中央ループ部と、該中央ループ部と扉外枠との間に前記線材を張り巡らした線材張設部とを有する構成としている。また、請求項4の扉は、前記扉内外面に破壊容易性の板体または着脱自在の板体からなる内外面単位パネルを所定間隔で複数個設け、該各内外面単位パネル間の空隙内に一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材を取り外しまたは弛緩自在に張り巡らした線材張り巡らし部を形成してなる構成としている。
【0008】ここで、前記破壊容易性の板体とは、ハンマー等によって簡単に壊す(孔を開ける)ことが難しい板体を除く意であって、一般的には、木製板、強化ガラス板等の板体をいう。また、着脱自在の板体とは、必ずしも破壊容易性の板体である必要はなく、鋼鈑や軽金属板等も含む。また、ワイヤー、チェーン等からなる線材には、強度を有する金属性材料等からなる線材をいい、線材の断面形状は、丸形、角形等形状はとわない。また、前記内外面パネル間の空隙幅は、前記線材からなる補強材を、丁度、配することができ、かつ補強機能を保持できる幅であることが好ましい。
【0009】そして、本発明の扉は、扉を開閉することができなくなった際、扉内外面パネル間の空隙に取り外しまたは弛緩自在に張り巡らして一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材を取り外しまたは弛緩状態とする作業と、該扉内外面パネルを壊すか、あるいは取り外す作業をすることで、該扉自体に簡単に通路となる孔をつくることができる。また、線材張り巡らし部の線材は、建物の内側からのみ取り外し、または、弛急が行える構造となっている。従って、非常時には、前記作業をすることで、容易に建物内部から脱出する事ができ、また、非常時および平常時には、前記線材張り巡らし部を建物の内側から取り外し、または、弛急を行わない限り、外部からの進入を防止することができる。従って、該通路を介して、非常時には、容易に脱出、あるいは救出することができ、また、平常時には、前記線材張り巡らし部が、外部からの侵入を防止し、更に扉の補強作用を奏する。
【0010】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の請求項1の扉によれば、扉内外面パネル間の空隙内に形成されている線材張り巡らし部を、取り外しまたは弛緩自在に張り巡らした一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材で形成しているので、通常時においては、該線材が線材張り巡らし部を形成し、また非常時においては、該線材を簡単に取り外しまたは弛緩状態にでき、該線材を取り外しまたは弛緩状態にすることにより、通路を簡単に作ることができるという効果を有する。
【0011】また請求項2の扉によれば、線材張り巡らし部を形成する線材の一部を扉の内面パネルの表面に露出しているので、該扉の外側から線材からなる線材張り巡らし部を取り外しまたは弛緩状態にすることができ、非常時における操作性を良好にできるという効果を有する。更に請求項3の扉によれば、線材張り巡らし部を形成する線材が、中央の中央ループ部と、該中央ループ部と扉外枠との間に前記線材を張り巡らせた線材張設部とからなるので、該中央ループ部の一部を切断等することによって、該中央ループ部と扉外枠との間に張り巡らされている線材張設部を同時に取り外しまたは弛緩状態にできるという効果を有する。また、請求項4の扉によれば、扉内外面に破壊容易性の板体または着脱自在の板体からなる内外面単位パネルを所定間隔で複数個設け、該内外面単位パネル間の空隙内に各線材張り巡らし部を設けているので、必要に応じて、緊急時に、扉全体を破ることなく、簡単に通路を得ることができる。
【0012】従って、本発明によれば、扉の開閉不能状態になった場合であっても、該扉に手早く通路を得ることができ、非常用扉として適した扉を提供できるという効果を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した最良の実施形態について説明する。ここに、
図1図4は、本発明の一実施形態を示し、図1は一部破断した正面図と、扉を開いた状態の平面図、図2は線材を張り巡らして形成した線材張り巡らし部の説明図、図3は線材張り巡らし部を取り外し、扉内外面パネルを壊して通路を形成した状態の斜視図、図4は扉を開いた状態の斜視図である。
【0014】本実施例の扉は、図1図3に示すように、扉周縁枠1と内外面パネル2,3、および線材張り巡らし部4を有し、扉周縁枠1と内外面パネル2,3の間に空隙部5が形成してあり、この空隙部5に線材張り巡らし部4を配した構成からなる。
【0015】扉周縁枠1は、木製、アルミ等の非鉄金属製、あるいはその他の金属製からなる矩形状の枠体で、その内外面に内外面パネル2,3が取り付けてある。内外面パネル2,3は、木製板あるいはガラス板からなる破壊容易性を有する板体で形成してある。なお、該内外面パネル2,3は、パネル全体を破壊容易性を有する板体で形成する必要はなく、部分的に破壊容易性を有する板体で形成してもよい。また、『破壊容易性を有する板体』であるので、電気切断機等を使用しなければ壊すことができない鉄板等を除くことになる。
【0016】扉周縁枠1と内外面パネル2,3の間の空隙部5に配してある線材張り巡らし部4は、図1図2に示すように、スチール製のワイヤー6を張り巡らせることによって形成している。この線材張り巡らし部4は、外部からの侵入を防止し、また扉自体を補強するための部分であって、ワイヤー6をループ状に配した中央ループ部7と、この中央ループ部7と扉周縁枠1との間を放射状に巻回、張り巡らした線材張設部8を有していて、中央ループ部7の一部を切断等することによって、簡単に取り外しまたは弛緩状態にできる。ワイヤー6の径は、空隙部5の空隙幅より若干小さい大きさとされていて、扉補強性を保持すると共に、簡単に空隙部5内で移動できる形態としてある。そして、本実施形態では、中央ループ部7の一部は、扉の室内側を形成する内面側パネル3の表面に露出、固定してある。これにより、中央ループ部7を形成するワイヤー6を扉外から容易に切断、あるいは外すことにより、線材張り巡らし部4を取り外し、または弛緩状態にできるようにしている。また、扉周縁枠1には、ワイヤー6を放射状に巻回、保持するためのクリップ状のワイヤー保持具9が任意間隔で、外枠内周縁に取り付けてある。
【0017】そして、本実施形態の扉は、扉嵌合用外枠20や扉周縁枠1が地震等の衝撃によって変形、その他の理由により、扉を開閉することができなくなった際、扉内外面パネル2,3間の空隙部5に取り外しまたは弛緩自在に張り巡らした一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材のうち、内面側のパネル3表面に露出しているワイヤー6の露出部分10を切断あるいは外すことにより、中央ループ部7で放射状に巻回、張り巡らしていた線材張設部8を形成するワイヤー6がフリー状態となると共に、空隙部5の下方に落下する。そして、この状態では、扉の扉内外面パネル2,3のいずれか(室内側あるいは室外側のどちらでもよい)から力を加えると、該内外面パネル2,3に簡単に孔を開け、通路11を作ることができる。従って、該通路を介して、非常時には、容易に脱出することができる。ところで、平常時においては、線材張り巡らし部4が、外部からの侵入を防止し、更に扉の補強作用を発揮する。
【0018】なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、例えば、線材張り巡らし部4は、図5に示すように左右の扉周縁枠1,1間に一本または複数本のワイヤー、その他の線材を巻回、張り巡らせる構成としてもよい。なお、『線材』には、幅を有する形態のものであってもよいことは当然である。ところで、前述した実施形態において、図6に示すように、中央ループ部7のループを大きくし、そのループ内側に郵便受け等のポスト12を設けた構成としてもよい。更に、前述した実施形態においては、扉の扉内外面パネル2,3の表面のいずれか一方あるいは両方にワイヤー6を取り外したり、あるいは弛緩状態にするためのワイヤー露出部分10(ワイヤー切断指示部分)を設けた構成で説明したが、該ワイヤー切断指示部分は、扉内部に隠した状態としてもよい。この場合、パネル2,3の表面に、ワイヤー6を切断等するための位置を示すためのマーク等を表示しておくことが好ましい。
【0019】また、図7に示すように、扉(ドア)の内外面を一枚の内面パネルと位置枚の外面パネルで形成することなく、それぞれを所定間隔で複数枚の単位パネル21を設け、各内外面単位パネル間の空隙内に一本または複数本のワイヤー、チェーン等からなる線材を取り外しまたは弛緩自在に張り巡らして形成した線材張り巡らし部22を設けた構成としてもよい。この場合は、各単位パネル21を破りあるいは取り外す作業と、各線材張り巡らし部22を切断する作業だけでよいので、扉全体を破る必要がないことから、緊急脱出、救出に素早く対応できるという利点を有する。なお、この場合において、各単位パネル21は単位枠23内に嵌め込んむ構成としている。



【図面の簡単な説明】
図1】本発明の一実施形態を示し、図1(a)は一部破断した正面図、図1(b)は扉を開いた状態の平面図である。
図2】線材を張り巡らして形成した線材張り巡らし部の説明図である。
図3】線材張り巡らし部を取り外し、扉内外面パネルを壊して通路を形成した状態の斜視図である。
図4】扉を開いた状態の斜視図である。
図5】本発明の他の実施形態の斜視図である。
図6】本発明の他の実施形態の斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態を示し、図7(a)は正面図、図7(b)は変形した状態の正面図、図7(c)は平面図である。
【符号の説明】
1・・・扉周縁枠、2・・・外面パネル、3・・・内面パネル、4・・・線材張り巡らし部、5・・・空隙部、6・・・ワイヤー、7・・・中央ループ部、8・・・線材張設部、9・・・ワイヤー保持具、10・・・ワイヤー6の露出部分(ワイヤー切断指示部分)、11・・・通路、12・・・ポスト、20・・・扉嵌合用外枠、21・・・単位内外面パネル、22・・・単位線材張り巡らし部、23・・・単位枠

図1

図2

図3

図4

図5

図6

図7