(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平10−11059
(43)【公開日】平成10年(1998)1月16日
(54)【発明の名称】電子ピアノ
(51)【国際特許分類第6版】
G10H 1/18
【FI】
G10H 1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】FD
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願平8−188754
(22)【出願日】平成8年(1996)6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【課題】 隣接する鍵盤を同時に打鍵しても一音だけを発生させ得るようにし、身障者や老人等の福祉向け楽器として適した電子ピアノを提供する。
【解決手段】 鍵盤の隣接する二以上の鍵盤を一単位として複数個のゾーンに分け、該各ゾーンに各音を割り当ててなる手段を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鍵盤の隣接する二以上の鍵盤を一単位として複数個のゾーンに分け、該各ゾーンに各音を割り当ててなることを特徴とする電子ピアノ。
【請求項2】 前記各ゾーンの鍵盤の数を設定変更自在としてなる請求項1に記載の電子ピアノ。
【請求項3】 前記隣接するゾーンの境界部分に位置する鍵盤を無音としてなる請求項1または2に記載の電子ピアノ。
【請求項4】 一鍵盤に一音を割り当てた配列に切替え設定自在としてなる請求項1〜3のいずれかに記載の電子ピアノ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子ピアノに係り、より詳細には、隣接する鍵盤を同時に打鍵しても一音だけを発生させ得るようにし、身障者や老人等の福祉向け楽器として適した電子ピアノに関する。
【0002】
【従来の技術】電子ピアノは、複数個の鍵盤と、この鍵盤を打鍵した場合、各鍵盤に対応して音色を発生させる構成、換言すれば、一鍵盤一音色からなる。すなわち、図4に示すように、1個の鍵盤(白鍵)毎に、『ド』『レ』『ミ』『ファ』『ソ』『ラ』『シ』『ド』のいずれかの音が割り当てられている。
【0003】ところで、近年、電子ピアノが、身障者や老人等のリハビリ等に用いる福祉向け楽器として使用されている。この電子ピアノは、鍵盤を打鍵するには、通常のピアノ程ではないものの、ある程度の力が必要であり、かつ演奏曲目に応じて、連続して位置の異なる鍵盤を打鍵するので、手や指、あるいは腕を左右方向に移動させる運動が必要なため、リハビリ用の楽器として適し、特に、このリハビリと同時に、曲目演奏による精神的な効能が期待でき、またピアノ演奏の上達につれてリハビリの成果が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した電子ピアノの場合、一鍵盤一音色からなるので、次のような課題がある。すなわち、
■ 鍵盤の形状、大きさが一定であるため、高年齢や運動能力の低下した老人や身障者においては、特定の鍵盤を打鍵できず、同時に隣接する鍵盤を打鍵することが多くなる。
■ そして、同時に隣接した鍵盤を打鍵すると、二つの音が発生するため、ピアノ練習をする意欲が薄れ、また身障者のリハビリに向かない。
■ また、ピアノ演奏、練習者の指の大きさ等によっては、高年齢や運動能力の低下した老人や身障者の場合と同様に、特定の1つの鍵盤を打鍵できない場合がある。等の課題がある。
【0005】本発明は、この究明した結果に基づいて創作したものであって、その目的とする処は、隣接する鍵盤を同時に打鍵しても一音だけを発生させ得るようにし、身障者や老人等の福祉向け楽器として適した電子ピアノを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の請求項1の電子ピアノは、鍵盤の隣接する二以上の鍵盤を一単位として複数個のゾーンに分け、該各ゾーンに各音を割り当ててなることを特徴とする。また、請求項2の電子ピアノは、前記請求項1のピアノにおいて、前記各ゾーンの鍵盤の数を設定変更自在としてなることを特徴とする。また請求項3のピアノは、前記請求項1または2のピアノにおいて、前記隣接するゾーンの境界部分に位置する鍵盤を無音としてなることを特徴とする。また請求項4のピアノは、前記請求項1〜3のいずれかのピアノにおいて、一鍵盤に一音を割り当てた配列に切替え設定自在としてなることを特徴とする。
【0007】本発明の電子ピアノは、従来の一鍵盤一音色のピアノの場合と同じく鍵盤を打鍵することによって、ピアノ演奏(ピアノ練習)をすることができる。ただ、本発明の電子ピアノにあっては、予め設定した各ゾーン内にある複数個の鍵盤を打鍵しても一音しか出ない。従って、ゾーン内にある鍵盤を塊として打鍵することができる。そして、この電子ピアノを老人や身障者等のリハビリ用の福祉楽器として使用した場合は、遊び感覚でその操作ができ、ピアノの上達につれてリハビリの成果が向上することになる。なお、前記ゾーンの設定に際し、黒鍵についても、白鍵に対応してゾーンを設定し、半音を割り当てることができる。ここで、本明細書において、電子ピアノには、電子キーボード、電子オルガン等鍵盤を有する楽器を含む。また、健常者等において、普通の鍵盤配列からなる従来の電子ピアノとして使用することもできる。
【0008】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の請求項1の電子ピアノによれば、鍵盤の隣接する二以上の鍵盤を一単位として複数個のゾーンに分け、該各ゾーンに各音を割り当ててなるので、遊び感覚でピアノ演奏(練習)ができる上に、該各ゾーンを塊で打鍵できるので、演奏者(練習者)の手や指の大きさの大きい人や、老人、身障者等の運動能力の低下した人に適するピアノを提供できると共に、リハビリ用の電子楽器として利用できるという効果を有する。
【0009】請求項2の電子ピアノによれば、前記各ゾーンの鍵盤の数を設定変更できるので、ピアノ練習や、リハビリの度合いに応じて、該各ゾーン内の鍵盤の数を変更でき、ピアノ練習や、リハビリの成果をいっそう向上させることができるという効果を有する。また請求項3の電子ピアノによれば、前記隣接するゾーンの境界部分に位置する鍵盤を無音としてなるので、手、指の大きい人や、運動能力が低下している人がピアノ練習を兼ねて行う場合で、同時に隣接する鍵盤を打鍵しても隣接する他の音が出ないので、その練習効果を高めることができるという効果を有する。更に請求項4の電子ピアノによれば、一鍵盤に一音を割り当てた配列に切替え設定自在であるので、通常の電子ピアノとしても使用できることから、ピアノ自体の機能を向上させる得るという効果を有する。
【0010】
【実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した好ましい実施の形態について説明する。ここに、図1〜図3は、本発明の実施形態を示し、図1は電子ピアノの鍵盤の平面図、図2〜3はゾーンを設定変更した鍵盤の平面図である。
【0011】本実施形態の電子ピアノは、図1に示すように、鍵盤1が、複数個のゾーン2,3,4・・に区分けされ、各ゾーン2,3,4・・に一つの音が割り当ててある。例えば、特定のゾーン2に入っている鍵盤2a,2b,2c・・のうちの何れの鍵盤を打鍵しても同じ音がでるように設定した構成からなる。
【0012】図1において、ゾーン2は、4個の鍵盤2a,2b,2c,2dからなり、ゾーン3は、3個の鍵盤2a,2b,2cからなり、ゾーン4は、4個の鍵盤2a,2b,2c,2dからなる。このように、各ゾーン2,3,4・・は、複数個の鍵盤を一単位としている。そして、ゾーン2には、音階の『ド』が割り当てられ、ゾーン3には、音階の『レ』が割り当てられ、ゾーン4には、音階の『ミ』が割り当てられ、順次、各ゾーン5,6・・に、『ファ』『ソ』『ラ』『シ』『ド』『レ』・・・が割り当てられている。
【0013】ここで、各ゾーン2,3,4・・において、各々のゾーン端部の鍵盤(図面において黒丸印を付した鍵盤)は、無音としている。これは、隣接の他のゾーンの鍵盤を打鍵した場合、他のゾーンの音が同時に出てしまうことを防止したことによる。この実施形態においては、例えば、ゾーン2は、4個の鍵盤2a,2b,2c,2dからなり、そのうちの鍵盤2a,2dが無音で、中央の2個の鍵盤2b,2cのみが、『ド』の音を出すことになる。また、ゾーン3の場合は、鍵盤が3個であるので、中央1個の鍵盤3bのみが『レ』の音を出すことになる。
【0014】この各ゾーン2,3,4・・は、その鍵盤の数を任意に設定変更することができる。例えば、図2に示すように、各ゾーン2,3,4・・は、それぞれ2個の鍵盤で構成して、1個の鍵盤2a,3a,4a・・・のみ音が出て、他の鍵盤2b,3b,4b・・・が無音とするように設定できる。このように、ピアノ練習、ピアノ演奏、リハビリをする人の運動能力等に合わせて、そのゾーンを構成する鍵盤の数を設定変更することができる。
【0015】そして、この実施形態の電子ピアノを、リハビリ等のために使用する場合は、通常の状態、すなわち一鍵盤一音色のピアノ演奏できる状態から、本実施形態の状態に切り替えを行うことで、従来のピアノを演奏する場合と同じく鍵盤を打鍵することによって、ピアノ演奏(ピアノ練習)をすることができる。そして、本実施形態の場合、例えば、音階の『ド』を得るには、ゾーン2内にある鍵盤2a,2b,2c,2dを塊として打鍵すればよい。ただし、無音部分のみの鍵盤を打鍵した場合は、音がでない。従って、この電子ピアノを老人や身障者等のリハビリ用の福祉楽器として使用した場合は、遊び間隔でその操作ができ、ピアノの上達につれてリハビリの成果を向上させることができる。
【0016】なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で変形実施できる構成を含む。因に、白鍵の場合について説明したが、黒鍵についても同様に構成することができる。また、前述した実施形態においては、音階によるピアノ練習、リハビリを行うことで説明したが、打鍵の強弱(パーカッション)でピアノ練習、リハビリを行う形態としてもよい。
【0017】また、図3に示すように、前記鍵盤を左手ボジションゾーン10と右手ボジションゾーン11に区分し、例えば、両ボジションゾーン10,11における塊盤しての打鍵できる鍵盤の数を異なる形態とすることもできる。ここでは、左手ポジションゾーン10が2個の鍵盤12a,12bを一単位として複数個のゾーンからなり、また右手ポジションゾーン11が3個の鍵盤13a,13b,13cを一単位として複数個のゾーンからなる。また、一方側のポジションゾーンを一鍵盤一音の普通の電子ピアノとして、他方側のポジションゾーンを隣接複数鍵盤一音とすることもできる。このように、両ポジションゾーンにおけるゾーンの鍵盤の数を変化させることによって、左手と右手の運動能力に差のある人に対処できるという利点を有し、また健常者でも普通のピアノとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の電子ピアノの鍵盤とその音階を示す平面図である。
【図2】ゾーンを設定変更した鍵盤とその音階を示す平面図である。
【図3】ゾーンを設定変更した鍵盤とその音階を示す平面図である。
【図4】従来の電子ピアノの鍵盤とその音階を示す平面図である。
【符号の説明】
1・・・鍵盤、2,3,4・・ゾーン、2a,2b,2c,2b・・・ゾーン2内の鍵盤、3a,3b,3c・・・ゾーン3内の鍵盤
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】
