(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平10−43261
(43)【公開日】平成10年(1998)2月17日
(54)【発明の名称】スライド手摺
(51)【国際特許分類第6版】
A61H 3/00
E04F 11/18
【FI】
A61H 3/00 Z
E04F 11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】FD
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願平8−223052
(22)【出願日】平成8年(1996)8月5日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【課題】 手摺(把手)の利用者の体型等に応じて、その取付け位置を任意の位置に移動させることができるスライド手摺を提供する。
【解決手段】 手摺本体に、手摺長手方向に沿ってスライド自在に手摺または把手を取り付け、また該手摺りまたは把手は、手摺り本体に対して係止する係止手段を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 手摺本体に、手摺長手方向に沿ってスライド自在に手摺または把手を取り付け、また該手摺りまたは把手は、手摺り本体に対して係止する係止手段を有することを特徴とするスライド手摺。
【請求項2】 前記手摺または把手を、前記手摺本体に対して直交する方向に取り付けてなる請求項1に記載のスライド手摺。
【請求項3】 前記手摺り本体が、筒状ガイドからなり、該筒状ガイドの長手方向に沿う切り欠き溝を設け、前記手摺りまたは把手を該切り欠き溝にスライド自在に取り付けてなる請求項1または2に記載のスライド手摺。
【請求項4】 前記係止手段が、前記筒状ガイド内に少なくとも2個の係合部材を配し、該各係合部材はガイド内壁に係合するガイド内壁係合部と、他方の係合部材と係合して楔作用をするテーパ面を有し、かつ該両係合部材は前記切り欠け溝から導出するスライド自在の手摺または把手を形成する握部を有し、該両握部同士が近接する方向に力が加わった際、両係合部材のテーパ面同士が係合すると共に、ガイド内壁係合部が筒内壁に当接して握部の位置を固定し、該両握部に加わる前記力を開放することにより、該握部が筒状ガイドに対してスライド自在とする請求項3に記載のスライド手摺。
【請求項5】 前記手摺り本体が、取り付け壁面に揺動自在あるいはスライド自在に取り付けてなる請求項1〜4のいずれかに記載のスライド手摺。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スライド手摺に係り、より詳細には、手摺本体にスライド自在の手摺または把手を設けたスライド手摺に関する。
【0002】
【従来の技術】各種の設備や器具において、その操作あるいは取扱上、種々の位置に取っ手、握り手、所謂、把手や手摺りが設けられている。しかし、従来の把手や手摺りの場合、固定構造であるため、一旦取り付けると、移動することができず、その取り付けは、通常、その利用者の体型に応じて介護し易い個所に設計設置されているが、これらの利用者の体型には、大きなバラツキがあるため、同一個所に、複数個の把手や手摺りが必要となり、複数個の把手や手摺りを近接位置に取り付けた場合美観的にも不格好になり、また、子供、老人や身障者の場合、その体勢が保持できなくなることが多くあり、十分な機能を期待できない、等の不便な点が多くある。
【0003】そこで、本発明者は、このような観点に鑑み、先に、手摺りの構造として、『表裏面を貫通する複数個の開口を備え、該各開口を形成する周縁枠を握り部とした手摺本体と、該手摺本体を壁面との間に空間をもって取り付けるための手摺取付部を備えてなる手摺』を提案した。この手摺(把手)は、マトリックス状に形成した握部を設けた構成に特徴を有していて、手摺(把手)利用者は、自分自身の体勢や体型に応じて、都合の良い握部を用いることができるという利点を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような手摺(把手)であっても、手摺(把手)を形成する握部がマトリックス状になっているため、次のような不便な点が残る。すなわち、
■ 手摺利用者の手の大きさ等によっては、握り難い場合がある。
■ あらゆる体型、すなわち子供、大人、身障者等が利用できるようにするには、マトリックス状の手摺の形態を大きくする必要がある。等の不便な点が残る。
【0005】そこで、本発明者は、この手摺(把手)の使用の便をいっそう良好にするために、種々、研究した結果、手摺(把手)をスライドでき、任意の位置に固定できる形態とすることで、前記課題を解決できることを究明した。
【0006】本発明は、以上のような課題に対処して創作したものであって、その目的とする処は、手摺(把手)の利用者の体型等に応じて、その取付け位置を任意の位置に移動させることができるスライド手摺を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の請求項1のスライド手摺は、手摺本体に、手摺長手方向に沿ってスライド自在に手摺または把手を取り付け、また該手摺りまたは把手は、手摺り本体に対して係止する係止手段を有することを特徴とする。請求項2のスライド手摺は、請求項1のスライド手摺において、前記手摺または把手を、前記手摺本体に対して直交する方向に取り付けてなることを特徴とする。請求項3のスライド手摺は、請求項1または2のスライド手摺において、前記手摺り本体が、筒状ガイドからなり、該筒状ガイドの長手方向に沿う切り欠き溝を設け、前記手摺りまたは把手を該切り欠き溝にスライド自在に取り付けてなることを特徴とする。
【0008】請求項4のスライド手摺は、請求項3のスライド手摺において、前記係止手段が、前記筒状ガイド内に少なくとも2個の係合部材を配し、該各係合部材はガイド内壁に係合するガイド内壁係合部と、他方の係合部材と係合して楔作用をするテーパ面を有し、かつ該両係合部材は前記切り欠け溝から導出するスライド自在の手摺または把手を形成する握部を有し、該両握部同士が近接する方向に力が加わった際、両係合部材のテーパ面同士が係合すると共に、ガイド内壁係合部が筒内壁に当接して握部の位置を固定し、該両握部に加わる前記力を開放することにより、該握部が筒状ガイドに対してスライド自在とすることを特徴とする。
【0009】請求項5のスライド手摺は、請求項1〜4のいずれかのスライド手摺りにおいて、前記手摺り本体が、取り付け壁面に揺動自在あるいはスライド自在に取り付けてなることを特徴とする。
【0010】ここで、前記筒状ガイドは、円筒あるいは角筒(四角、三角等)等の筒体からなり、それ自体が単独の形態からなる場合、あるいは他の設備、機器その他に組み込まれた形態からなる場合がある。それ自体が単独の形態からなる場合としては、杖、手摺り等があり、また他の設備、機器その他に組み込まれた形態からなる場合としては、ドア等がある。そして、この筒状ガイドは、通常、金属、硬質プラスチック等からなる中空パイプで形成してある。また把手部は、ドア等の把手として使用されている形態である握り棒、あるいは球状体で形成してある。また、前記両係合部材同士または該両係合部材の把手部同士が、圧縮スプリング、引張スプリング等のバネ材で接続しておくことが好ましい。これにより手摺りや把手を簡単にスライドでき、その操作性を向上できる。また、前記係合部材のテーパ面に、ナイロン、テフロン、その他の摺動性部材が設けることが好ましい。これにより両者の係合状態を良好にすることができる。
【0011】そして、本発明のスライド手摺は、壁面等に取り付けた手摺り本体にスライド自在に取り付けられている手摺りまたは把手を握って、手摺り本体に対してスライドさせ、特定の位置で係止手段によって、該手摺りまたは把手を手摺り本体に対して固定することで、手摺りまたは把手の取り付け位置を任意に変更することができる。また、手摺り本体と手摺り、把手が立体的に形成されてるため、立体的な手摺りとして利用することができると共に、手摺り利用者のガイドとしても利用できる。
【0012】また、請求項4の係止手段を有するスライド手摺りの場合は、筒状ガイド内に配してある係合部材から該筒状ガイドの切り欠け孔を介して導出する把手部を持って、該筒状ガイド内をスライドさせ、この位置で固定しようとする場合は、両方の把手部を、片手で握る等して、両把手部同士が近接する方向に力を加えると、前記両係合部材のテーパ面が楔作用をして、そのガイド内壁と係合部材の内壁係合部の摩擦抵抗によって固定できる。このようにして、任意に位置に把手の位置を変更等できる。
【0013】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の請求項1のスライド手摺にによれば、手摺り本体に対してスライドさせ、特定の位置で係止手段によって、該手摺りまたは把手を手摺り本体に対して固定することで、手摺りまたは把手の取り付け位置を任意に変更することができるという効果を有する。また、請求項2のスライド手摺は、前記手摺本体に対して直交する方向に取り付けてなるので、立体的な構造の手摺りとして利用でき、かつその設置スペース等を有効利用することができるという効果を有する。また請求項3のスライド手摺によれば、記手摺り本体が、長手方向に沿う切り欠き溝を設けた筒状ガイドからなり、前記手摺りまたは把手を該切り欠き溝にスライド自在に取り付けてなるので、手摺り本体に対して手摺り、把手とを安定状態で保持できる。
【0014】請求項4のスライド手摺によれば、長手方向に沿う切り欠き溝を有する筒状ガイド内に少なくとも2個の係合部材を配し、該各係合部材は筒内壁に係合する内壁係合部と、他方の係合部材と係合して楔作用をするテーパ面を有しているいるので、該両係合部材のテーパ面を筒状ガイド内で係合させたり、開放させたりすることで、該係合部材から筒状ガイド外に導出している把手部の位置を任意にスライドさせることができ、また固定することができることから、把手の取付け後であっても、利用者の生活環境等に対応して、該把手の設置位置の変更が簡単にできるという効果を有する。請求項5のスライド手摺によれば、前記手摺り本体を取り付け壁面に対して揺動自在またはスライド自在に取り付けてなるので、その取り付け位置を任意に変更できるという効果を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した好ましい実施の形態について説明する。ここに、図1〜図4は、本発明の実施形態である把手付き手摺りを示し、図1は部分断面図、図2は図1のA−A断面図、図3は筒状ガイドの斜視図、図4は使用状態を説明するための断面図である
【0016】本実施形態は、図1〜図4に示すように、把手付手摺りとして具体化したものであって、概略すると、手摺り本体部1と、スライド式把手部2の2つの部分からなる。手摺り本体部1は、筒状ガイド3で形成されていて、従来の手摺りと同じく、壁面4に接続部材5によって連結固定してある。筒状ガイド3は、ステンレススチールその他の金属パイプで形成してあり、その少なくとも一部には、パイプ長手方向に沿う割り溝、すなわち切り欠け孔6が設けてある。切り欠け孔6は、手摺りとして壁面4に固定した状態で、下側または前側、もしくは上側に形成してあり、本実施形態では、下側に設けている。また、手摺りを形成する筒状ガイド3は、図3(a)(b)に示すように、円筒あるいは角筒等の筒体として形成してある。一般的に、筒体は、30mm〜100mm程度としている。しかし、この径は、設置する場所、あるいは対象とする手摺り利用者の体型その他によって任意の大きさのものを選択して設置できる。そして、筒状ガイド3にはスライド式把手部2の係合部材7,8が、スライド自在に内挿してある。
【0017】スライド式把手部2は、2個の係合部材7,8と、この係合部材7,8にそれぞれ固定されている把手9,10とからなる。ここで、本実施形態では、係合部材7と把手9、係合部材8と把手10は、それぞれ一体物として形成してある。しかし、着脱自在の形態としてもよい。この場合、利用者の手の大きさ等に対応できるという利点を有する。係合部材7と係合部材8は、筒状ガイド3が円筒の場合、断面が弧状に形成してあり、例えば、図2に示す断面では、両者が半円を形成している。しかし、この形状に限られるものではない。係合部材7,8の一方の断面積を大きくした形態であってもよい。この係合部材7は、筒状ガイド3のガイド内壁11の上側内壁面11aに係合するガイド内壁係合面12と、係合部材8と係合して楔作用をするテーパ面13を有し、また係合部材8は、ガイド内壁11の下側内壁面11bに係合するガイド内壁係合面14と、係合部材7と係合して楔作用をするテーパ面15を有している。ガイド内壁係合面12とガイド内壁係合面14は、筒状ガイド内壁面11a,11bと面接触できる面形態となっている。またテーパ面13,15は、その傾斜角度α,βが等しく形成してある。この傾斜角度α,βは、筒状ガイド3の内径、あるいは把手10にかかる荷重等によって異なるが、5°〜65°程度、好ましくは、15°〜30°としている。しかし、これ以外の角度であってもよい。また、係合部材7,8に繋がっている把手9,10は、それぞれ筒状ガイド3の下側に形成されているガイド長手方向に沿う切り欠け孔6から外部に導出していて、手摺り利用者が握ることができる形態となっている。そして、この把手9,10を握って、近接する方向(矢印a方向)に力を加えると、係合部材7,8のテーパ面13,15が摺動して重合し、係合部材7がガイド内壁11の上側内壁面11a方向に、また係合部材8がガイド内壁11の下側内壁面11b方向に、矢印bに示すように押しやられ、係合部材7,8とガイド内壁11が係合し、またテーパ面13,15同士が係合し、スライド式把手部2を手摺り本体部1の任意の位置に固定できる。
【0018】また、係合部材7と係合部材8は、図5に示すように、圧縮スプリング16によって接続されている。把手9,10を近接する方向に力をかけない場合、自動的に係合部材7と係合部材8の係合状態を解除でき、把手9,10を簡単にスライドでき、その操作性を良好にできる。また、係合部材7のテーパ面13と、係合部材8のテーパ面15には、ナイロン、テフロン、その他の摩擦性部材が設けてある。これにより、両者の係合状態を良好にすることができる。なお、圧縮スプリング16は、スプリングの作用をするものであれば、他のバネ材であってもよい。また、この圧縮スプリングは、把手9,10間に設けることもできる。
【0019】本実施形態の把手付き手摺りは、まず、手摺り本体部1を、その筒状ガイド3の切り欠け孔6が下側を向くように取り付け、スライド式把手部2は、予め、あるいは後から筒状ガイド3に内装する。そして、この把手付き手摺りは、手摺り利用者が、把手9,10が近接する方向に力が加わらないように、通常、一方の把手を握って移動すると、把手9,10は、係合部材7,8が開放状態(係合、固定していない状態)であるので、筒状ガイド3に沿って移動でき、手摺り本体部1を握って手を滑らせながら移動する必要がない。そして、所定の個所まで移動して、途中で停止する必要がある時は、把手9,10を握り締めることによって、圧縮スプリング16のバネ力に逆らって係合部材7,8が近接し、テーパ面13,15が重なり係合し、係合部材7がガイド内壁11の上側内壁面11a方向に、また係合部材8がガイド内壁11の下側内壁面11b方向に、矢印bに示すように押しやられ、係合部材7,8とガイド内壁11が係合し、またテーパ面13,15同士が係合し、スライド式把手部2を手摺り本体部1の任意の位置に固定できる。また、移動する時は、握った力を緩めることによって、再び、把手9,10を持って筒状ガイド3に沿って移動することができる。
【0020】従って、本実施形態によれば、把手を握って手摺りに沿って移動できるるので、従来の手摺りのように、手摺り利用者が手摺りを直接握り、手を滑らせながら移動する必要する場合、途中で手摺りから手が離れたりする等の危険性を回避できる。また、任意の位置で、停止することもでき、その際は、把手の位置が途中で動かないようにできるので、身障者等の使用にとって便利性を有する。
【0021】なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で変形実施できる形態を含む。例えば、図6に示すように、手摺り本体部を取り付け壁面に対して揺動自在(図6a参照)あるいはスライド自在(図6b参照)に取り付ける形態としてもよい。この場合においても、手摺り本体を壁面に対して固定する手段を設けることが肝要である。これによって、立体的な手摺りを得ることができると共に、手摺り、把手設置後であっても任意の位置に手摺り、把手を取り付け変更できる。また、手摺り本体に対して、手摺りや把手は、図7に示すように、手摺り本体に対して直交する向きに設けることにより、より立体的な手摺りを形成できる(図7参照)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である把手付き手摺りを示す部分断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】筒状ガイドの斜視図である。
【図4】使用状態を説明するための断面図である
【図5】両係合部材間をバネ材で連結した構成の断面図である。
【図6】他の実施形態を示す概略図である。
【図7】他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・手摺り本体部、2・・・スライド式把手部、3・・・筒状ガイド、4・・・壁面、5・・・接続部材、6・・・切り欠け孔、7,8・・・係合部材、9,10・・・把手、11・・・筒状ガイド3のガイド内壁、11a・・・上側内壁面、11b・・・下側内壁面、12・・・ガイド内壁係合面、13・・・テーパ面、14・・・ガイド内壁係合面、15・・・テーパ面、16・・・圧縮スプリング、20・・・杖、21・・・杖本体
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】
