(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平10−141436
(43)【公開日】平成10年(1998)5月29日
(54)【発明の名称】精密機器用免震・転倒防止装置
(51)【国際特許分類第6版】
F16F 15/04
【FI】
F16F 15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】FD
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願平8−315452
(22)【出願日】平成8年(1996)11月11日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【課題】 精密機器の設置が容易で、しかも転倒を防止できると共に、免震機能を備えた精密機器用免震・転倒防止装置を提供する。
【解決手段】 精密機器の免震・転倒防止装置であって、該精密機器の底面より広い面積の精密機器取りつけ台と下部ベース台を有し、該精密機器取りつけ台の上面に取りつけ位置が調整自在の精密機器固定部を設け、また該精密機器取りつけ台の下面にゴム、バネ等の弾性体を設け、該弾性体を下部ベース台に接続した手段を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 精密機器の免震・転倒防止装置であって、該精密機器の底面より広い面積の精密機器取りつけ台と下部ベース台を有し、該精密機器取りつけ台の上面に取りつけ位置が調整自在の精密機器固定部を設け、また該精密機器取りつけ台の下面にゴム、バネ等の弾性体を設け、該弾性体を下部ベース台に接続してなることを特徴とする精密機器用免震・転倒防止装置。
【請求項2】 前記精密機器取りつけ台の上面に、該精密機器と交差する方向に延びる複数本の長溝を設け、前記精密機器固定部が該長溝と該精密機器を両側方向から挟持する保持体材を有する請求項1に記載の精密機器用免震・転倒防止装置。
【請求項3】 前記精密機器取りつけ台の下部および/または精密機器の上部に液体を入れたタンク等の非線形振動体を設けてなる請求項1または2に記載の精密機器用免震・転倒防止装置。
【請求項4】 前記下部ベース台が、床面あるいはテーブル台である請求項1〜3の何れかに記載の精密機器用免震・転倒防止装置。
【請求項5】 前記請求項1〜4のいずれかに記載の精密機器用免震・転倒防止装置を精密機器の底面に着脱自在に取りつけてなることを特徴とする精密機器の構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、精密機器用免震・転倒防止装置に係り、より詳細には、コンピュータ、コンピュータ付属品(HDD、FDD、その他)等の精密機器への地震等の際の震動の揺れによる影響の軽減や、該精密機器の転倒を防止するための精密機器用免震・転倒防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】コンピュータ等の精密機器は、その下面または側面に脚を備え、該脚を床面等のベースに載置あるいは固定する構造となっている。このような該精密機器は、ベースに対して強固に固定した場合、転倒等のおそれを防止できる。また、該脚とベースとの間に、弾性体を介挿した場合は、ベースからの震動を吸収させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述したコンピュータ等の精密機器の設置構造の場合、次のような課題がある。
■ 前記精密機器が床面等のベースに直接固定する場合、その設置作業に手数を要すると共に、その設置位置の変更、すなわち、該精密機器の移動が難しい。
■ ベースの震動が弾性体を介して精密機器に直接伝導されるため、充分な震動の吸収ができず、精密機器の故障原因となる。
■ 複数台の精密機器を設置する場合、それぞれをベースに固定する必要があるため、その設置作業に手数を要すると共に、ベース面上に設置されている配線その他設備により、設置場所に制限が生じる。
等の問題がある。
【0004】本発明は、以上のような課題に対処して創案したものであって、その目的とする処は、精密機器の設置が容易で、しかも転倒を防止できると共に、免震機能を備えた精密機器用免震・転倒防止装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための手段としての本発明の請求項1の精密機器用免震・転倒防止装置は、精密機器の底面より広い面積の精密機器取りつけ台と下部ベース台を有し、該精密機器取りつけ台の上面に取りつけ位置が調整自在の精密機器固定部を設け、また該精密機器取りつけ台の下面にゴム、バネ等の弾性体を設け、該弾性体を下部ベース台に接続してなることを特徴とする。
【0006】請求項2の精密機器用免震・転倒防止装置は、前記請求項1の発明において、前記精密機器取りつけ台の上面に、該精密機器と交差する方向に延びる複数本の長溝を設け、前記精密機器固定部が該長溝と該精密機器を両側方向から挟持する保持体材を有することを特徴とする。請求項3の精密機器用免震・転倒防止装置は、前記請求項1または2の発明において、前記精密機器取りつけ台の底面および/または精密機器の上部に液体を入れたタンク等の非線形振動体を設けてなることを特徴とする。また請求項4の精密機器用免震・転倒防止装置は、前記請求項1〜3の発明において、前記下部ベース台が、床面あるいはテーブル台であることを特徴とする。
【0007】また、請求項5の精密機器の構造は、前記請求項1〜4の何れかの精密機器用免震・転倒防止装置を精密機器の底面に着脱自在に取りつけてなることを特徴とする。
【0008】ここで、前記精密機器取りつけ台は、精密機器を設置できる板体等の形態であれば、その形状を問わない。前記弾性体は、ゴム、スプリング等で、垂直・水平方向の振動を吸収できる形態からなる弾性体を用いる。そして、本発明の精密機器用免震・転倒防止装置は、前記精密機器を精密機器取りつけ台の上面に精密機器固定部により固定することで使用できる。また、前記非線形振動体としては、振動を抑制あるいは拡散する作用をするもの、例えば、液体を入れたタンクの他、粘性振動体、あるいは下部に重り(分銅)を付けたコイル体等を用いることができる。
【0009】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の請求項1の精密機器用免震・転倒防止装置によれば、ゴム等の弾性体を備えた精密機器取りつけ台を介して、あるいは該精密機器取りつけ台と下部ベース台を介して床面等の設置ベースに設置されるので、該設置ベースからの地震等の震動が弾性体で吸収され、また該精密機器取りつけ台が該精密機器の底面より広い面積の台であり、かつ該精密機器が精密機器取りつけ台に固定されているので、該精密機器は該精密機器取りつけ台と一体として設置ベースに対して摺動し、該震動に対応するので転倒防止性および免震性が良好になるという効果を有する。また精密機器の取りつけ位置が調整自在の精密機器固定部を有するので、複数台の精密機器を任意に取り付けることができる。
【0010】請求項2の精密機器用免震・転倒防止装置によれば、前記精密機器取りつけ台の上面に、該精密機器と交差する方向に延びる複数本の長溝を設け、前記精密機器固定部が該長溝と該精密機器を両側方向から挟持する保持体材を有しているので、前記効果に加えて、大きさの異なる任意の該精密機器に対応できるという効果を有する。請求項3の精密機器用免震・転倒防止装置によれば、前記精密機器取りつけ台の下部および/または精密機器の上部に、液体を入れたタンク等の非線形振動体を設けてなるので、前記各効果に加えて、非線形振動体が震動(振動)を抑制するように作用するため、いっそう免震効果を向上させることができる。請求項4の精密機器用免震・転倒防止装置によれば、下部ベース板が不要となるので、その構成を一層簡略化することができる。
【0011】また、本発明の請求項5の精密機器の構造によれば、前記精密機器の底面に前記精密機器取りつけ台が着脱自在に固定した構成であるので、該精密機器の設置状態が安定し、転倒防止性が良好となり、また精密機器取りつけ台および該台に取りつけてある弾性体が設置ベースの震動を吸収するため、該精密機器が不規則な震動するのを防止でき、該精密機器の故障の発生を防止できるという効果を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した好ましい実施形態について説明する。ここに、図1〜図4は、本発明の一実施形態を示し、図1は斜視図、図2は正面図、図3は精密機器取りつけ台の平面図、図4は側面図である。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で変形実施できる構成を含む。
【0013】本実施形態のの精密機器用免震・転倒防止装置は、コンピュータ、FDD、HDDその他の精密機器1に適用できる免震・転倒防止装置であって、図1〜図3に示すように、精密機器1を取りつける精密機器取りつけ台2と下部ベース台6からなる。この精密機器取りつけ台2は、精密機器1の底面1aの面積より広い面積の板体からなり、板体上面2aには、精密機器1を着脱自在に固定するための精密機器固定部3が設けてある。また、板体下面2bには、震動を吸収するためのゴム、バネ、スプリング等からなる弾性体4と、震動を抑制あるいは拡散させるための非線形振動体9が設けてあり、この弾性体4は、下部ベース台6の上面に固定してある。
【0014】ここで、ここで、精密機器1としては、縦型(タワー型)の精密機器に有効である。しかし、一般的な横型の精密機器にも適用できる。精密機器取りつけ台2は、プラスチック板、木製板、金属板等の剛性板からなり、一般的には、精密機器1の底面1aの面積の1.5〜2倍程度の面積の板体からなる。精密機器取りつけ台2の大きさは、搭載する精密機器1の大きさや台数等によって任意のものを用いることができる。この精密機器取りつけ台2を精密機器1の底面1aに固定することによって、精密機器1の安定性が向上することになり、転倒の危険性を回避できる。
【0015】精密機器1は、精密機器取りつけ台2の精密機器固定部3を介して着脱自在に固定することができる。この精密機器固定部3は、図3に示すように、精密機器取りつけ台2の上面に形成された複数本の溝3aと、この溝3aに嵌合してスライド自在の精密機器挟持板3b、および締めつけ用ボルト3cとからなる。複数本の溝3aは、蟻溝状に形成されていて、この溝3a内に精密機器挟持板3bの底部分を嵌合できる構成からなり、また精密機器挟持板3bは断面L状板からなり、底板部分に締めつけ用ボルト3cが挿通するボルト孔3dが設けてある。また、精密機器挟持板3bは内側にクッション材やゴム板等の弾性材8が取りつけられている。この精密機器挟持板3bを溝3a内に精密機器1の大きさに対応して任意にスライドさせ、精密機器1の左右から挟持させると共に、ボルト孔3d、締めつけ用ボルト3cにより精密機器1を精密機器取りつけ台2に固定することができる。
【0016】ゴム、バネ、スプリング等の弾性体4は、精密機器取りつけ台2の底面2bに複数個設けてある。弾性体4は、精密機器取りつけ台2に搭載・固定した精密機器1と、台2自体の重量を保持できると共に、設置ベース5からの震動を吸収できる弾性力を保持した弾性体とすることが肝要である。非線形振動体9は、水等の液体が封入されたタンクからなる。この非線形振動体9としては、この他に、粘性振動体、あるいは重りを吊るしたコイル等を用いることができる。
【0017】下部ベース台6は、精密機器取りつけ台2と同じく、プラスチック板、木製板等の剛性板からなり、一般的には、精密機器取りつけ台2の1.2〜2倍程度の面積の板体を用いている。また、下部ベース台6の下面にはキャスター、クッション材(ゴムやスプリングからなる弾性体)等の保持体7が取りつけてある。
【0018】そして、下部ベース台6と精密機器取りつけ台2を連結する弾性体4によって、設置ベース5からの震動が吸収され、また震動は精密機器取りつけ台2の全表面に均一に伝達される。従って、精密機器取りつけ台2に搭載・固定してある精密機器1への震動が吸収できる。そして、通常、下部ベース台6は、精密機器1を設置するための設置ベース5と固定自在の形態としている。
【0019】本実施形態の精密機器用免震・転倒防止装置は、精密機器1を精密機器取りつけ台2の上面に設けられている精密機器固定部3により固定し、この精密機器取りつけ台2を弾性体4を介して固定してある下部ベース台6を机や床面等の設置ベース5に設置することで使用することができる。そして、本実施形態の精密機器用免震・転倒防止装置を用いて設置ベース5に設置した精密機器1は、地震等によって、設置ベースに震動が発生した場合、精密機器取りつけ台2と共に、下部ベース台6と弾性体4を介して設置ベース5に対して摺動する。しかし、精密機器取りつけ台2に伝わる震動は、途中で、弾性体4で吸収され、また非線形振動体9によって、その振動が抑制されるため、精密機器取りつけ台2の上に搭載している精密機器1に不規則な震動が伝達されるのを防止できる。また、精密機器1の底面より大きい面積の精密機器取りつけ台2の上に固定されているので、転倒が防止できる。
【0020】そして、この精密機器用免震・転倒防止装置を精密機器1の底面に取り付けておくことにより、転倒防止機能、免震機能を備えた精密機器を提供することができ、また従来の精密機器に転倒防止機能、免震機能を付与することができる。ところで、前述した実施形態では、下部ベース台を設置ベースと別途設けた構成で説明したが、該下部ベース台が床面や机等の設置ベースである形態(図1〜図3において、下部ベース台を有せず、弾性体4が直接設置ベース上に配置してある形態)としてもよいことは当然である。
【0021】また、前記実施形態において、図5に示すように、非線形振動体9は、精密機器1の上部に設けた構成としてもよい。この場合、精密機器1の上部に直接固定する形態のほか、精密機器取りつけ台2から精密機器1の上部方向に非線形振動体9を保持するためのフレームを立設し、このフレームに非線形振動体9を設置する形態としてもよい。また、非線形振動体9を精密機器1の上部に設けると共に、精密機器取りつけ台2の下部にも設ける形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】精密機器取りつけ台の平面図である。
【図4】図1の側面図である。
【図5】他の実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
1・・・精密機器、1a・・・精密機器1の底面、2・・・精密機器取りつけ台、2a・・・板体上面、2b・・・板体底面、3・・・精密機器固定部、3a・・・溝、3b・・・スライド自在の精密機器挟持板、3c・・・締めつけ用ボルト、3d・・・ボルト孔、4・・・弾性体、5・・・設置ベース、6・・・下部ベース台、7・・・保持体、9・・・非線形振動体
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】
