(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平10−219955
(43)【公開日】平成10年(1998)8月18日
(54)【発明の名称】自在手摺り
(51)【国際特許分類第6版】
E04F 11/18
// A61H 3/00
【FI】
E04F 11/18
A61H 3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】FD
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願平9−32690
(22)【出願日】平成9年(1997)2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【課題】 美観的にも良好で、老人あるいは身障者等の手摺り利用者が、体勢を崩しても安心して利用でき、かつ手摺りの握り変えがスムーズに行えると共に、該手摺りを構成する周縁枠内に手を突っ込んだ状態で、スムーズな移動ができる自在手摺りを提供する。
【解決手段】 表裏面を貫通する1個または複数個の開口を備え、該開口を形成する周縁枠を握り部とした手摺り本体と、該手摺り本体を壁面との間に空間をもって取り付けるための手摺り取付部を備え、該周縁枠の全部または一部に櫛歯状部を形成してなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表裏面を貫通する1個または複数個の開口を備え、該開口を形成する周縁枠を握り部とした手摺り本体と、該手摺り本体を壁面との間に空間をもって取り付けるための手摺り取付部を備え、該周縁枠の全部または一部に櫛歯状部を形成してなることを特徴とする自在手摺り。
【請求項2】 前記周縁枠の左右両側または片側に櫛歯状部を形成してなる請求項1に記載の自在手摺り。
【請求項3】 前記櫛歯状部の先端に球状等の拡部を形成してなる請求項1または2に記載の自在手摺り。
【請求項4】 前記周縁枠の表面に把手若しくは棒状手摺りを着脱自在に取り付けてなる請求項1〜3のいずれかの項に記載の自在手摺り。
【請求項5】 前記手摺り本体が可動自在である請求項1〜4のいずれかに記載の自在手摺り。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自在手摺りに係り、より詳細には、身長、運動能力、その他体格の異なる者でも利用でき、特に、老人や身体障害者の使用に便利な自在手摺りに関する。
【0002】
【従来の技術】図9(a)(b)に、従来の手摺りを示す。この手摺り51は、歩行者や設備利用者の介護設備の一つであって、通常、手摺り本体52が、強度を有するステンレス製等の棒材若しくはパイプからなり、棒材若しくはパイプの両端に手摺り取付部53を設け、この手摺り取付部53を所定の壁面54に固定できる構造からなる。そして、例えば、浴室においては、その介護設備として、種々の向きに取り付けられている。図9(b)の場合、この手摺り51が浴槽55の上方の壁面56に、浴槽55に沿って水平方向、垂直方向に取り付けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した構造の手摺りの場合、次のような課題がある。すなわち、
■ 手摺りは、固定構造であるため、一旦取り付けると、移動することができない。
■ 手摺りの取り付けは、通常、老人あるいは身障者等の手摺り利用者の体型に応じて介護し易い個所に設計設置されているが、これらの利用者の体型には、大きなバラツキがあるため、同一個所に、複数個の手摺りが必要となる。
■ そして、複数個の手摺りを近接位置に取り付けた場合、あるいは向きの異なる手すりを取り付けた場合、美観的にも不格好になる。
■ また、老人や身障者の場合、手摺りを利用している際、その体勢が保持できなくなることが多くあり、十分な機能を期待できない。
等の課題がある。
【0004】ところで、本発明者は、先に、図10に示すような、『表裏面を貫通する複数個の開口を備え、該各開口を形成する周縁枠を握り部とした格子状、すなわちマトリックス状の手摺り本体と、該手摺り本体を壁面との間に空間をもって取り付けるための手摺り取付部を備えてなる自在手摺り』を提案した(特願平8−195654号参照)。そして、この手摺りは、前記した課題を十分に解決することができる。
【0005】しかし、この自在手摺りの場合、次のような難点のあることが判明した。すなわち、
■ 手摺り利用者が、手摺りを掴みながら移動する場合、一旦、マトリックス状の握り部から手を抜いてから、次の握り部を掴む必要があるため、スムーズな移動ができない。
■ 握り部を、手摺りの正面側から掴む形態からなるので、握り部を掴み損ねる場合があり、その取り付け位置、取り付け向きに制限がある。特に、老人あるいは身障者等の利用する場合、これらのことを考慮して取り付ける必要がある。
■ 他の利用用途が少ない。
等の課題が残る。
【0006】本発明は、以上のような課題に対処して創作したものであって、その目的とする処は、美観的にも良好で、老人あるいは身障者等の手摺り利用者が、体勢を崩しても安心して利用でき、かつ手摺りの握り変えがスムーズに行えると共に、該手摺りを構成する周縁枠内に手を突っ込んだ状態で、スムーズな移動ができる自在手摺りを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の請求項1の自在手摺りは、表裏面を貫通する1個または複数個の開口を備え、該開口を形成する周縁枠を握り部とした手摺り本体と、該手摺り本体を壁面との間に空間をもって取り付けるための手摺り取付部を備え、該周縁枠の全部または一部に櫛歯状部を形成してなることを特徴とする。
【0008】また、請求項2の自在手摺りは、前記請求項1の自在手摺りにおいて、前記周縁枠の左右両側または片側に櫛歯状部を形成してなることを特徴とする。また請求項3の自在手摺りは、前記請求項1または2の自在手摺りにおいて、前記櫛歯状部の先端に球状等の拡部を形成してなることを特徴とする。請求項4の自在手摺りは、前記請求項1〜3の自在手摺りにおいて、前記周縁枠の表面に把手若しくは棒状手摺りを着脱自在に取り付けてなることを特徴とする。請求項5の自在手摺りは、前記請求項1〜4のいずれかの手摺りにおいて、前記手摺り本体が可動自在であることを特徴とする。
【0009】ここで、前記手摺り本体の握り部を形成する開口は、少なくとも、手摺り利用者の手が挿入でき、かつ該握り部を握ることができる程度の大きさの開口とすることが好ましい。また該手摺り本体は、一般的には、鋳型成形、あるいは棒材等を交差溶着して成形し、複数個の開口を有するパネル状とした構成からなる。そして、その材質としては、耐水性、耐候性、強度性を有するもの、例えば、ステンレス製、プラスチック製、木製、および複合素材製のものを使用することが好ましい。また、前記櫛歯状部は、櫛歯状に開口を形成する周縁枠に設けてある複数本の突起からなり、該突起は、手摺り利用者が握ることができる程度の長さで、その先端と対面する握り部(周縁枠あるいは櫛歯状部)との間に、手摺り利用者が手を差し込んだ状態で滑らせるようにして他の握り部に握り替えができる程度の隙間を設けている。該突起の向きは、同一方向、あるいは異なる方向に形成している。
【0010】本発明の自在手摺りは、従来の手摺りと同様に、浴室、トイレ、玄関、廊下、あるいは階段の側壁面に取り付けることができる。そして、手摺り利用者は、歩行等する際、この手摺りをもって移動等するが、該手摺り本体が、単なる棒体ではなく、複数個の開口を備え、かつ該開口の周縁枠の全部または一部に櫛歯状部を形成しているので、該櫛歯状部または周縁枠を手摺りの握り部として掴み、かつ一つの開口内で、手を滑らせるようにして前方等の櫛歯状部または周縁枠を掴むことができる。従って、手摺りがマトリックス状のものと異なり、手摺り利用者が、該手摺りを構成する開口内に手を突っ込んだまで滑らせて手摺りの握り変えができ、かつスムーズな移動ができる。
【0011】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の請求項1の自在手摺りによれば、手摺り本体を、表裏面を貫通する1個または複数個の開口を備え、該開口を形成する周縁枠の全部または一部に櫛歯状部を形成し、該周縁部と櫛歯状部を握り部としているので、手摺り利用者が、従来の棒状の手摺りと同じく手を滑らせて移動できると共に、老人や身障者等の手摺り利用者の体型等に対応して、複数個の手摺りを設ける必要がなく、握り部を立体的に掴むことができるため、老人や身障者等の手摺り利用者に優しい介護設備を提供できるという効果を有する。
【0012】請求項2の自在手摺りによれば、前記周縁枠の左右両側または片側に櫛歯状握り部を形成してなるので、開口部分を拡げることができることから、前記効果に加えて、握り部をいっそう掴み易くできるという効果を有する。また請求項3の自在手摺りによれば、前記櫛歯状部の先端に球状等の拡部を形成してなるので、前記効果に加えて、該櫛歯状部が下向きに形成されている場合等において、手が手摺りから離脱するのを防止できるという効果を有する。
【0013】請求項4の自在手摺りによれば、前記周縁枠の表面に、該手摺り本体の取り付け用ベースとして把手や棒状手摺りを取り付けているので、前記各効果に加えて、該把手や棒状手摺りの取り付け個所、向きを任意に変更することができ、また老人や身障者等の手摺り利用者にとって、手摺り本体と、これに取り付けている把手や棒状手摺りを手摺りとして使用できるので、老人や身障者等の手摺り利用者により優しい介護設備を提供できるという効果を有する。更に、請求項4の自在手摺りによれば、手摺り本体部を自由に移動あるいは回動できるので、前記各効果に加えて、該手摺りの取り付け状態を任意に変更できる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した好ましい実施の形態について説明する。ここに、図1〜図4は、本発明の実施形態を示し、図1は自在手摺りの斜視図、図2は自在手摺りの平面図と側面図、図3は自在手摺りの浴室での使用状態の説明図、図4は棒状手摺りを取り付けた場合の説明図である。
【0015】本実施形態の自在手摺り1は、手摺り本体部2と手摺り取付部3の2つの部分を有し、手摺り本体部2は、金属製パネル体13からなり、この金属製パネル体13には表裏面を貫通する複数個(本実施形態では4個)の開口4が形成してある。そして、開口4の周縁枠5には櫛歯状部6が形成してあり、この周縁部5と櫛歯状部6が握り部7を形成している。
【0016】ここで、金属製パネル体13に形成されている握り部7は、図1、図2に示すように、マトリックス状の一部がカットされて、周縁枠5に複数個の櫛歯6′が並列に配列され、周縁枠5に櫛歯状部6が形成された形態からなる。そして、握り部7を形成する周縁枠5と櫛歯状部6は、その角部5a、6aが面取り(R加工、C加工)してあり、握り易くしていて、周縁枠5と櫛歯6′との交差部分8が若干広幅となっていて、この中央部分に手摺り取付部3に形成されている螺子挿入孔9と連通する螺子固定用孔10が設けてある。
【0017】手摺り本体部2を形成する金属製パネル体13は、鋳物、あるいはアルマイト、プラスチック、木、複合材処理したアルミニウム等を用いている。また、この手摺り本体部2は、棒材、あるいはパイプを溶接等によって連結して形成することもある。そして、厚みは、10mm以上、握り部6の幅は、50mm以上程度が好ましい強度を保つ。また、櫛歯状部6が周縁枠5の片側に蚤形成されている形態にあっては、隣接する周縁枠5,5との間に形成される空間は、130mm〜160mm程度が好ましく、また櫛歯状部6の突起6′の長さは、通常の手摺り利用者が安全に握ることができる80mm〜120mm程度が好ましく、また突起6′,6′間の間隔は、110mm〜130mm程度が好ましい。しかし、他の間隔、長さ等であってもよいことは当然である。また、各握り部7は、断面が4角形(好ましくは、角部分を面とりした正方形)のものが好ましい。断面円形のものに比べて、握り易く、かつ脱落し難いことを考慮したことによる。
【0018】手摺り本体部2の周縁部5の裏面側には、手摺り取付部3が設けてある。手摺り取付部3は、自在手摺り1を壁面11の所定の個所に、手摺り本体部2を壁面11との間に空間をもって取り付けることができる形態からなり、内部に螺子挿入孔12を有する。
【0019】本実施形態の自在手摺り1は、図3に示すように、例えば、浴室に設置する場合は、浴槽20の上方壁面20a、洗い場21の上方壁面21aに、螺子固定用孔10と螺子挿入孔12に螺子を挿入し、取付け壁面に螺子止め固定することで設置できる。また、階段等に設置する場合は、階段の側壁面に固定設置することで、浴室に設置する場合と同様にして設置できる。また、この自在手摺り1は、壁面に沿って左右方向、あるいは上下方向に複数個連続して設置することによって、手摺り使用者の便に供することができる。
【0020】そして、この自在手摺り1は、手摺り使用者が、手摺り本体部2の周縁枠5と櫛歯状部6からなる握り部7を掴むことによって、種々の形態の介護設備として使用できる。すなわち、従来の棒状の手摺りと異なり、握り部7が一つのパネル体に左右方向あるいは上下方向に複数個あるので、歩行あるいは立ち上がりをスムーズに行える。またマトリックス状の手摺りと異なり、開口内に手を突っ込んだ状態で、該手を滑らせて前方の握り部を握ることができるので、スムーズな移動ができる。すなわち、本実施形態の自在手摺りは、従来の棒状の手摺りと、本発明者が先に提案したマトリックス状の手摺りの両機能を兼ね備えた機能を得ることができる。
【0021】また、本実施形態の自在手摺り1を手摺り取付けベースとして用いることができる。すなわち、図4に示すように、この自在手摺り1の手摺り本体部2の周縁部5または櫛歯状部6に他の、例えば、棒状手摺り15等の他の手摺りを取り付けることもできる。この形態の場合は、手摺り本体部2に棒状手摺り15を取り付けるための螺子固定用孔10を複数個所に設けることによって、種々の方向を向いた棒状手摺り15を着脱自在に設置することができる。そして、この形態にあっては、手摺り本体部2の握り部7と、新たに取り付けた棒状手摺り15とを併用して使用でき、使用者の便をいっそう向上させることができる。
【0022】また、本実施形態の自在手摺りは、左右動、上下動あるいは回動自在とすることが好ましい。すなわち、自在手摺りを左右動させる形態としては、壁面に蟻溝状のレールを取り付けると共に、該蟻溝状レールに手摺り本体部の手摺り取付部を滑動あるいは摺動自在に嵌合する形態が好ましい。この場合、手摺り取付部の蟻溝状レール嵌合部分は、脱落しないように該蟻溝に完全に嵌合させることが肝要である。また、自在手摺りを回動させる形態としては、壁面と手摺り取付部とをロータリージョイントを介して連結する形態とすることが好ましい。なお、これらの形態において,任意の位置で左右動あるいは回動を停止、固定できる機構を取り付けることが必要である。
【0023】なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で変形実施できる構成を含むことは当然である。例えば、手摺り本体部2の形状は、上述したように四角形に限られるものでなく、三角形その他の形状としてもよい。また、手摺り本体部2に取り付ける手摺り15としては、棒状の手摺りの他に、把手であってもよい。また、図5に示すように、櫛歯状部6を周縁枠5の両側に設けた構成、また図6に示すように、対面する周縁枠5に形成されている櫛歯状部6の突起6′をずらした位置に配置した形態としてもよい。更に、図7に示すように、櫛歯状部6の突起6′の先端に手が滑り落ちるのを防止するための拡部16を設けた構成としてもよい。これにより、手摺り利用者が移動途中で、手摺りから手を滑らせてしまうのを防止できる。更にまた、図8に示すように、棒状手摺り15と組み合わせた形態としてもよい。すなわち、櫛歯状部6を備えた周縁枠5と平行に、棒状手摺り15を取り付けた形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す自在手摺りの斜視図である。
【図2】自在手摺りの平面図と側面図である。
【図3】自在手摺りの浴室での使用状態の説明図である。
【図4】手摺り本体部に棒状手摺りを取り付けた場合の説明図である。
【図5】他の実施形態の平面図である。
【図6】他の実施形態の平面図である。
【図7】他の実施形態の平面図である。
【図8】他の実施形態の平面図である。
【図9】従来の手摺りの斜視図と、使用状態の説明図である。
【図10】先に提案した自在手摺りの斜視図である。
【符号の説明】
1・・・自在手摺り、2・・・手摺り本体部、3・・・手摺り取付部、4・・・開口、5・・・周縁枠、6・・・櫛歯状部、6′・・・櫛歯状部の突起(各歯部分)、7・・・握り部、8・・・交差部分、9・・・螺子挿入孔、10・・・螺子固定用孔、11・・・壁面、12・・・螺子挿入孔、13・・・金属製パネル体、15・・・棒状手摺り、16・・・拡部
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】
