(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平10−337341
(43)【公開日】平成10年(1998)12月22日
(54)【発明の名称】球技用ボール
(51)【国際特許分類第6版】
A63B 41/00
【FI】
A63B 41/00 A
B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】FD
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願平9−166579
(22)【出願日】平成9年(1997)6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【課題】 表皮層を形成する多角形状皮革シートの周縁部の縫合を簡易に行えると共に、良好な縫合ラインを形成できるサッカーボール等の球技ボールを提供する。
【解決手段】 圧搾空気を封入した弾力性を有する球状中空体と、該球状中空体を被覆する複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を有し、該表皮層が隣接する多角形状皮革シートの周縁部を重ね合わせ、該重ね合わせ部を縫合して形成した球技用ボールにおいて、該隣接する多角形状皮革シートの重ね合わせ部を複数個のステープルで縫合してなる手段を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧搾空気を封入した弾力性を有する球状中空体と、該球状中空体を被覆する複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を有し、該表皮層が隣接する多角形状皮革シートの周縁部を重ね合わせ、該重ね合わせ部を縫合して形成した球技用ボールにおいて、該隣接する多角形状皮革シートの重ね合わせ部を複数個のステープルで縫合してなることを特徴とする球技用ボール。
【請求項2】 圧搾空気を封入した弾力性を有する球状中空体と、該球状中空体を被覆する複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を有し、該表皮層が隣接する多角形状皮革シートの周縁部を重ね合わせ、該重ね合わせ部を縫合して形成されている球技用ボールにおいて、該隣接する多角形状皮革シートの重ね合わせ部を複数個の雄雌形状の止め具で縫合してなることを特徴とする球技用ボール。
【請求項3】 前記ステープルまたは止め具による縫合ラインを、複数列設け、該複数列の各ステープルの位置を交差配列してなる請求項1または2に記載の球技用ボール。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、球技用ボールに係り、より詳細には、圧搾空気を封入した弾力性を有する球状中空体と、該球状中空体を被覆する複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を有するサッカーボール等の球技用ボールに関する。
【0002】
【従来の技術】サッカーボール等の球技用ボールは、通常、前記球状中空体の表面に複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を配した構成からなる。該表皮層は、該多角形状皮革シートの周縁部を隣接する他の多角形状皮革シートの周縁部と重ね合わせ、該重ね合わせ部分に一定間隔で複数個の縫合用小孔を設け、該小孔に縫合用糸を通して、該隣接する多角形状皮革シートの重ね合わせ部分を縫い合わせて、全体として球形状に形成している。そして、該球形状の表皮層の内部に、前記球状中空体を収納することで球技用ボールを製造している。
【0003】ところで、球技用ボールは、そのボールのコントロール性やグリップ性を上げるために、通常、隣接するシート間に形成される縫合ライン部分の溝を深くする必要があることから、硬い皮革シートを使用したり、あるいは大きい径の糸で皮革シートを縫合しなければならない。そのため、縫合作業は、手作業に寄らざるを得ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、前述した球技用ボールの場合、複数枚の多角形状皮革シートの周縁部の重ね合わせ部分を縫合用糸を用いて、手作業による縫い合わせで表皮層を形成しているので、次のような課題がある。すなわち、
■ 球技用ボールの製作工程における表皮層の形成工程の占める割合が高く、その作業性が低下する。
■ 手作業によるため、縫合による締め付け力にバラツキが発生し、良好な形態のボールを得ることができず、また球技用ボールとして必要な、コントロール性やグリップ性も十分に確保できない。
■ 更に、球技用ボールは、表皮層を形成する多角形状皮革シートの裏面に布等からなるバッキング層を設け、該多角形状皮革シートとバッキング層とを一体に縫合するため、その縫合作業が難しくなる。等の課題がある。
【0005】本発明は、以上のような課題に対処して創作したものであって、その目的とする処は、表皮層を形成する多角形状皮革シートの周縁部の縫合を簡易に行えると共に、縫合の際の締め付け力にバラツキを少なくでき、良好な縫合ラインを形成できるサッカーボール等の球技ボールを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の請求項1の球技用ボールは、圧搾空気を封入した弾力性を有する球状中空体と、該球状中空体を被覆する複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を有し、該表皮層が隣接する多角形状皮革シートの周縁部を重ね合わせ、該重ね合わせ部を縫合して形成した球技用ボールにおいて、該隣接する多角形状皮革シートの重ね合わせ部を複数個のステープルで縫合してなることを特徴とする。
【0007】請求項2の球技用ボールは、前記請求項1の発明において、圧搾空気を封入した弾力性を有する球状中空体と、該球状中空体を被覆する複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を有し、該表皮層が隣接する多角形状皮革シートの周縁部を重ね合わせ、該重ね合わせ部を縫合して形成されている球技用ボールにおいて、該隣接する多角形状皮革シートの重ね合わせ部を複数個の雄雌形状の止め具で縫合してなることを特徴とする。
【0008】請求項3の球技用ボールは、前記請求項1または2の発明において、前記ステープルまたは止め具による縫合ラインを、複数列設け、該複数列の各ステープルの位置を交差配列してなることを特徴とする。
【0009】ここで、前記球技用ボールは、サッカーボール、バレーボール、ハンドボール等の各種ボールで、圧搾空気を封入した弾力性を有する球状中空体と、該球状中空体を被覆する複数枚の多角形状皮革シートからなる表皮層を有し、該表皮層が隣接する多角形状皮革シートの周縁部を重ね合わせ、該重ね合わせ部を縫合して形成したボールをいう。前記表皮層を形成する皮革シートは、合成皮革、天然皮革、その他の皮革と同様の性質を備えた布等からなるシートをいう。前記ステープルには、金属製、あるいは合成樹脂製の綴じ用の針、例えば、ホッチキス(商標)の針を用いることができる。また、前記球状中空体としては、一般的なゴムチューブを用いることができる。
【0010】そして、本発明の球技用ボールは、裏面に布等からなるバッキング層を貼り付けて形成した複数枚の多角形状皮革シートを準備し、隣接する多角形状皮革シートの周縁部を重ね合わせて、該重ね合わせ部分を複数個のステープルまたは止め具により縫合し、全体として球形状の表皮層を形成した後、この表皮層を裏返すと共に、該表皮層の内部にゴムチューブ等からなる球状中空体を封入することで製作できる。
【0011】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の請求項1または2の球技用ボールによれば、隣接する多角形状皮革シートの重ね合わせ部を複数個のステープルあるいは雄雌形状の止め具で縫合して表皮層を形成してなるので、縫合の際の締め付け力のバラツキの発生を少なくし、また縫合作業を簡略化することができ、更に機械化することができることから、ボール製作時間を短縮することができるという効果を有する。請求項3の球技用ボールによれば、前記ステープルまたは止め具による縫合ラインを、複数列設け、該複数列の各ステープルの位置を交差配列してなるので、前記効果に加えて、該縫合ラインの強度を簡単な作業でもって、容易に形成できるという効果を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した好ましい実施形態について説明する。ここに、図1〜図3は、本発明の実施形態を示し、図1は球技用ボールの正面図、図2は縫合部分の断面図、図3は縫合工程を示す説明図である。
【0013】本実施形態の球技用ボールは、図1に示すように、サッカーボール1で、前述した従来のサッカーボールと同様に、球状中空体2の外表面に表皮層3が形成してあり、球状中空体2は、弾力性を有する球状のゴムチューブからなり、表皮層3は、複数枚の多角形状皮革シート4,4・・の周縁部4aを縫い合わせて球形状に形成してある。そして、この多角形状皮革シート4,4・・は、6角形皮革シート6と、5角形皮革シート7を有し、この2種類の皮革シート6,6・・,7,7・・を縫い合わせ・組み合わせることによって、球状中空体2の外表面を被覆できる所定の大きさの球状体にできる。また、この多角形状皮革シート4,4・・・は、その裏面に複数枚の布を積層したバッキング層9が貼合してある。ここで、この複数枚の多角形状皮革シート4,4・・の周縁部4aには、必要に応じて、隣接する多角形状皮革シート4,4を重ね合わせた際、一致する箇所に小孔が穿ってある。そして、本実施形態のサッカーボール1は、表皮層3に特徴を有する。
【0014】この特徴とする表皮層3は、図2に示すように、複数枚の多角形状皮革シート4,4・・の周縁部4aを、複数個のステープル(staple)5,5・・で縫い合わせた構成からなる。ステープル5,5・・は、『コ』字状の一般的な、紙等を綴じるためのステープラー(stapler)で用いる金属製、プラスチック製等からなる針、例えば、ホッチキス(商標)針を用いることができる。ステープル5,5・・は、図3に示すように、隣接する多角形状皮革シート5,5の周縁部4aを重ね合わせた重ね合わせ部分を形成する一方側の多角形状皮革シート5から押し込み、他方側の多角形状皮革シート5の裏面で、その先端を折り曲げて留めることで縫合ライン8を形成してある。そして、このステープル5,5・・による縫合ライン8は、1列あるいは複数列設けてある。ここで、ステープル5,5・・による縫合ライン8を複数列設ける場合は、図3(b)(c)に示すように、縫合ライン8を形成するステープル5,5・・が、それぞれ交差するように配列することがことが好ましい。これにより、縫合強度を高めることができる。図3(b)は、重ね合わせた多角形状皮革シート5,5の一方側からのみステープル5,5・・を押しつけ・固定して2列の縫合ライン8を形成した構成であり、また図3(c)は、異なる方向からステープル5,5・・を押しつけ・固定して2列の縫合ライン8を形成した構成である。
【0015】次に、この多角形状皮革シート4,4・・の隣接する辺同士を縫い合わせて表皮層3を形成するには、図3に示すように、ステープラーを用いて、通常の紙を綴じるのと同様の操作でもって、該ステープラーの針、すなわちステープル5,5・・を一方側の多角形状皮革シート4に押し付けると共に、該押し付けた側の反対側の多角形状皮革シート4の裏面側で折り曲げ・固定することで、縫合することができる。この縫合作業を多角形状皮革シート4の各辺の周縁部4aについて行うことで、最終的に、球状体からなる表皮層3を製作することができる。そして、この表皮層3の内部にボールの芯を形成する弾性体からなる球状中空体2を封入することで、サッカーボール1を製作することができる。
【0016】そして、本実施形態のサッカーボールは、ステープル5,5・・を用いて、表皮層3を形成する多角形状皮革シート4,4・・を縫い合わせているので、従来の縫合用糸を用いて縫い合わせる場合に比べて、別途、縫合用小孔を設ける必要がなく、例えば、予め、ステープル5,5・・によって形成する縫合ライン8に対応するラインを線描き等しておき、該ラインに沿ってステープル5,5・・を押し込み・留めることで、縫合力にバラツキを少なくでき(あるいはバラツキを解消でき)、簡易に、その縫合ができる。従って、その作業性を向上させることができる。
【0017】なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で変形実施できる構成を含む。因に、前述した実施形態においては、ステープルを用いて、縫合する構成で説明したが、図3(d)に示すように、雄雌形状の止め金11,12を用いて縫合する構成としてもよい。この形態の場合は、多角形状皮革シート4,4・・に、その縫合ライン8に沿う縫合用小孔13を予め穿設しておき、該縫合用小孔13に止め金11を押し込み、この止め金11を、他方側の多角形状皮革シート4の裏面側に配した止め金12に嵌合させる形態とるすことが好ましい。また、サッカーボールの他に、ハンドボール、バレーボール、バスケットボール等の各種の球技用ボールに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す球技用ボールの正面図である。
【図2】縫合部分の断面図である。
【図3】縫合工程を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・サッカーボール、2・・・球状中空体、3・・・表皮層、4・・・多角形状皮革シート、4a・・・多角形状皮革シートの周縁部、5・・・ステープル、6・・・6角形皮革シート、7・・・5角形皮革シート、8・・・縫合ライン、9・・・バッキング層、11、12・・・止め金、13・・・縫合用小孔
【図1】

【図2】

【図3】
