(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平11−81602
(43)【公開日】平成11年(1999)3月26日
(54)【発明の名称】手摺り
(51)【国際特許分類第6版】
E04F 11/18
【FI】
E04F 11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】FD
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願平9−256105
(22)【出願日】平成9年(1997)9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】591222407
【氏名又は名称】株式会社松屋総合研究所
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号
(72)【発明者】
【氏名】松塚 展門
【住所又は居所】山口県岩国市室の木町1丁目7番45号 株式会社松屋総合研究所内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 博文
(57)【要約】
【課題】 その製作が容易であって、かつ握った状態で、滑りを少なくすることができる歩行者や設備利用者の介護設備の一つのとしての手摺りを提供する。
【解決手段】 握り部が中実体からなる手摺り本体を備えている手摺りであって、該握り部の手摺り長さ方向に交差する方向に複数個の穴または貫通孔を設け、該握り部に該穴または貫通孔からなる滑り止めを形成してなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 握り部が中実体からなる手摺り本体を備えている手摺りであって、該握り部の手摺り長さ方向に交差する方向に複数個の穴または貫通孔を設け、該握り部に該穴または貫通孔からなる滑り止めを形成してなることを特徴とする手摺り。
【請求項2】 前記穴は、前記中実体表面側が中実体内部側に対して大径穴に形成した段差を有する請求項1に記載の手摺り。
【請求項3】 前記貫通孔は、前記中実体表面側が中実体内部側に対して大径の貫通孔である請求項1に記載の手摺り。
【請求項4】 前記穴または慣通孔が、前記握り部の手摺り長さ方向に直交する方向に形成した複数個の穴または貫通孔であって、該複数個の穴または慣通孔のうちの一部の穴または慣通孔が手摺り取り付け部を形成している請求項1〜3のいずれかの項に記載の手摺り。
【請求項5】 前記手摺り本体が、棒状体からなる握り部を有する請求項1〜4のいずれかの項に記載の手摺り。
【請求項6】 前記手摺り本体が、表裏面を貫通する複数個の開口を備え、該各開口を形成する周縁枠を握り部とした請求項1〜4のいずれかの項に記載の手摺り。
【請求項7】 前記手摺り本体の握り部が、断面円形状あるいは楕円形状であって、該握り部の表面に前記穴または貫通孔により手摺り長さ方向に沿う波状に形成してある請求項1〜6のいずれかの項に記載の手摺り。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、老人や身体障害者の使用に便利な手摺りに係り、より詳細には、製作が容易であって、かつ握った状態で、滑りを少なくすることができる歩行者や設備利用者の介護設備の一つの手摺りに関する。
【0002】
【従来の技術】手摺りは、歩行者や設備利用者の介護設備の一つとして、通路、階段、浴室等の壁面に取り付けてある。そして、従来の手摺りは、図6(a)(b)に示すような構造からなる。この手摺り51は、図6(a)に示すように、その手摺り本体52が、ステンレス等の一本の金属製パイプで形成され、該パイプの両端に、手摺り取付部53が設けてあって、この手摺り取付部53を所定の壁面54に固定できる構造からなる。そして、例えば、浴室においては、その介護設備として、種々の向きに取り付けているいる。図6(b)の場合、この手摺り51が浴槽55の上方の壁面56に、浴槽55に沿って水平方向、垂直方向に取り付けられている。
【0003】しかし、このような一本の金属製パイプからなる手摺りの場合、
■ 固定構造であるため、一旦取り付けると、移動することができない。
■ 手摺りの取り付けは、通常、老人あるいは身障者等の手摺り利用者の体型に応じて介護し易い個所に設計設置されているが、これらの利用者の体型には、大きなバラツキがあるため、同一個所に、複数個の手摺りが必要となる。
■ そして、複数個の手摺りを近接位置に取り付けた場合、あるいは向きの異なる手すりを取り付けた場合、美観的にも不格好になる。
■ また、老人や身障者の場合、手摺りを利用している際、その体勢が保持できなくなることが多くあり、十分な機能を期待できない。
等の難点がある。
【0004】本発明者は、このような点に鑑み、先に、『表裏面を貫通する複数個の開口を備え、該各開口を形成する周縁枠を握り部とした手摺り本体と、該手摺り本体を壁面との間に空間をもって取り付けるための手摺り取付部を備えてなる構成』の手摺りを提案した(特願平8−195654号明細書参照)。そして、この手摺りによれば、老人や身障者等の手摺り利用者の体型等に対応して、複数個の手摺りを設ける必要がなく、かつ握り部を立体的に掴むことができるため、老人や身障者等の手摺り利用者に優しい介護設備を提供できるという利点を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この手摺りの場合、一般的には、手摺り本体を、鋳型成形、あるいは棒材等を交差溶着して成形し、複数個の開口を有するパネル状に成形することで製作するため、前述したパイプ状の金属製手摺りと異なり、次のような課題が残ることがわかった。すなわち、
■ 手摺り本体部が、格子状に形成されているため、ステンレス製パイプ等を用いて加工・成形することが難しい。
■ そのため、鋳物またはプラスチックにより、手摺り本体部を中空に成形することが考えられるが、該鋳物の場合、重量的に難点があり、またプラスチックの場合、中空とすると強度面で難点がある。なお、中実とした場合は、その成形性が低下する。
■ 前述した従来の手摺りと異なり、手摺り取付部の取り付けが難しく、手摺りの取り付け個所、取り付け向きに制限を受ける。
等の課題がある。なお、その他に、前述したステンレス製パイプ等で形成した手摺りについても言えることであるが、その手摺り本体部の握り部を握った際に、滑り易いという課題もある。
【0006】本発明は、上述したような課題に対処して創作したものであって、その目的とする処は、その製作が容易であって、かつ握った状態で、滑りを少なくすることができる歩行者や設備利用者の介護設備の一つのとしての手摺りを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の手摺りは、握り部が中実体からなる手摺り本体を備えている手摺りであって、該握り部の手摺り長さ方向に交差する方向に複数個の穴または貫通孔を設け、該握り部に該穴または貫通孔からなる滑り止めを形成してなることを特徴とする。また、本発明の手摺りは、前記発明において、■前記穴は、前記中実体表面側が中実体内部側に対して大径穴に形成した段差を有する構成、■前記貫通孔は、前記中実体表面側が中実体内部側に対して大径の貫通孔である構成、■前記慣通孔が、前記握り部の手摺り長さ方向に直交する方向に形成した複数個の穴または貫通孔であって、該複数個の穴または慣通孔のうちの一部の穴または慣通孔が手摺り取り付け部を形成している構成、■前記手摺り本体が、棒状体からなる握り部を有する構成、■前記手摺り本体が、表裏面を貫通する複数個の開口を備え、該各開口を形成する周縁枠を握り部とした構成、■前記手摺り本体の握り部の表面が、手摺り長さ方向に沿う波状に形成してある構成、も特徴とする。
【0008】ここで、前記手摺りは、歩行者や身体不自由者等が握って態勢を保持する握り部を有する手摺りで、一本の棒状体からなる一般的な手摺りの他に、例えば、前述した特願平58−195654号明細書に示すように、表裏面を貫通する複数個の開口を備え、該各開口を形成する周縁枠を握り部とした手摺り本体を備えた手摺り、等種々の形態のものを含む。また、前記『中実体』とは、パイプ状(中空体)でないことを意味する。更に、前記穴または貫通孔は、丸孔(穴)、楕円形孔(穴)、その他の孔(穴)とすることができる。また、該穴または貫通孔の孔(穴)径としては、握り部の形状によっても異なるが、該握り部の外径が20mm〜40mm程度の場合で、該孔(穴)径が15〜30mm程度が好ましい。これは、握った際、滑り止め機能を得られ、該孔(穴)の感触が不自然さを生じないということによる。なお、該穴または貫通孔は、その孔(穴)径が異なるものを設けた構成としてもよい。また、貫通孔は、手摺りを壁面等に取り付けた状態において、該壁面に対して前後方向に貫通する貫通孔または、前後方向に設けられた穴、あるいは該壁面に対して平行方向に貫通する貫通孔または穴、更には、斜め方向に貫通する貫通孔または穴とすることができ、また必要に応じて、これらの異なる貫通孔または穴を組み合わせた形態としてもよい。また、手摺りは、その材質として、耐水性、耐候性、強度性を有する素材からなるプラスチックが好ましい。しかし、他の材質からなるものでもよい。また、前記握り部の断面形状は、円形、楕円形状、四角形状、その他多角形状のいずれでもよいが、円形状、あるいは楕円形状が好ましい。そして、本発明の手摺りは、従来の手摺りと同様に、浴室、トイレ、玄関、廊下、あるいは階段の側壁面に取り付けることができ、手摺り利用者は、歩行等する際、身体の体勢を整える際、立ち上がる際に、この手摺りをもって移動等することができる。
【0009】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の手摺りによれば、中実体からなる握り部の手摺り長さ方向に交差する方向に複数個の穴または貫通孔を設け、該握り部に該貫通孔からなる滑り止めを形成してなるので、該穴または貫通孔からなる滑り止めによって、手摺り利用者が握った手と手摺りとの密着性が良好になり、手摺りとしての安全性を向上させることができるという効果を有する。また、手摺り本体を中実体で形成し、かつ該中実体に穴または貫通孔を形成しているので、手摺りを軽量化することができると共に、プラスチック成形品として製作できるので、その成形性を向上させることができるという効果を有する。
【0010】また、前記発明において、穴は、前記中実体表面側が中実体内部側に対して大径穴に形成した段差を有する構成や、前記貫通孔が前記中実体表面側が中実体内部側に対して大径の貫通孔である構成にあっては、握り部の強度を低下させることなく、滑り止め効果をいっそう良好にできる。また穴または慣通孔が前記握り部の手摺り長さ方向に直交する方向に形成した複数個の穴または貫通孔であって、該複数個の穴または慣通孔のうちの一部の穴または慣通孔が手摺り取り付け部を形成している構成にあっては、手摺りの取り付け位置、向きを任意に設定できる。また手摺り本体が棒状体からなる握り部を有する構成にあっては、滑り止め機能が得られると共に、手摺りの取り付け位置、向きを任意に設定できる。更に手摺り本体が、表裏面を貫通する複数個の開口を備え、該各開口を形成する周縁枠を握り部とした構成にあっては、前記各効果に加えて、プラスチック成形品として製造することができ、かつその製作性が向上し、また、老人や身障者等の手摺り利用者の体型等に対応して、複数個の手摺りを設ける必要がなく、かつ握り部を立体的に掴むことができるため、老人や身障者等の手摺り利用者に優しい介護設備を得ることができる。更に、前記手摺り本体の握り部が、断面円形状あるいは楕円形状であって、該握り部の表面に前記穴または貫通孔により手摺り長さ方向に沿う波状に形成してある構成にあっては、握り部の波形状に指がフィットすることから、滑り止め機能がいっそう良好になり、また美観上、良好な手摺りを得ることかできる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した好ましい実施の形態について説明する。ここに、図1〜図5は、本発明の実施形態を示し、図1は手摺りの斜視図、図2は手摺りの平面図、図3は図2の一部拡大図、図4は部分断面図、図5手摺りの浴室での使用状態の説明図である。そして、本実施形態の手摺り1は、プラスチック成形品であって、手摺り本体部2と手摺り取付部3の2つの部分を有している。
【0012】手摺り本体部2は、表裏面を貫通する複数個の開口4,4・・・が形成してあり、この開口4の周縁枠5が握り部6を形成している。ここで、握り部6は、図1〜図3に示すように、格子模様状(マトリックス状)に形成してある。しかし、手摺り使用者にとって握り易い形状であれば、他の形状(例えば、千鳥模様状や菱形模様状)であってもことは当然である。一般的には、格子模様(マトリックス模様)状に形成している。そして、握り部6を形成する周縁枠5は、中実体からなる断面円形状に形成してある。
【0013】また、握り部6を形成する周縁枠5は、その断面形状が断面が円形(楕円状でもよい)であって、その周縁枠5には、複数個の貫通孔7,7・・・が所定間隔で連続して設けてある。これにより、図4(b)に示すように、その表面6aに手摺り長さ方向に沿う波形状が形成されることになる。すなわち、貫通孔7,7・・・が設けてある個所が窪んだ状態、貫通孔7,7・・・が設けてない個所は突出した状態で、この状態が交互に並んでいることから、丁度、手で握った際に、手の指がフィットし、握り易くなると共に、滑り止め機能が良好に得られる。この貫通孔7は、図4(b)に示すように、中実体表面側に大径孔7aで、中実体内部側が小径孔7bからなる段差を有する貫通孔として形成してある。ここで、貫通孔7,7・・・の孔周縁にはアール(R)が形成している。これにより、握った状態をいっそう良好にできる。そして、この貫通孔7,7・・・の任意の孔が、手摺り本体部2を壁面8に取り付けるための手摺り取付部3を形成している。また、左右の周縁枠5,5の交差する個所16に形成されている貫通孔7,7・・・は、図4(c)示すように、中実体内部側に形成してある小径孔7bの少なくとも一部を中実部14としてある。換言すれば、貫通孔7,7・・・は、中実部14を底面とする穴15,15を形成した構成からなる。そして、この部分が、通常、手摺り取付部3を形成している。この手摺り取付部3は、手摺り1を所定の個所に、手摺り本体部2を壁面8との間に空間をもって取り付けることができる形態からなる。そして、手摺り取付部3を形成する貫通孔7,7・・・(本実施形態では、穴15,15の底面を形成している中実部15を切り取る等して取り除くことで貫通孔として用いる)には、アンカーボルト9と、締め付け用ナット10a,10bを挿入・締め付けし、手摺り1を壁面8に任意に取り付けることができる。なお、11は、アンカーボルト9を周囲から覆う筒状カバーである。
【0014】本実施形態の自在手摺り1は、図5に示すように、例えば、浴室に設置する場合は、浴槽12の上方壁面12a、洗い場13の上方壁面13aの任意の貫通孔7,7・・に対応する位置にアンカーボルト9を取り付けると共に、このアンカーボルト9に、筒状カバー11、締め付け用ナット10b、貫通孔7,7・・を嵌合すると共に、締め付け用ナット10aを挿入・締め付けることで、壁面12a,13aに取り付けることができる。なお、この手摺り1は、手摺り取付部3を形成する貫通孔7の選択によって、壁面に沿って左右方向、あるいは上下方向に複数個連続して設置することによって、手摺り使用者の便に供することができる。
【0015】そして、この手摺り1は、手摺り使用者が、従来の手摺りと同様に、手摺り本体部2の握り部6を掴むことによって、介護設備として使用できる。ところで、本実施形態の手摺り1は、握り部6の貫通孔7,7・・・を引抜き成形することで形成できるので、金型を用いて、簡単にプラスチック成形することができる。従って、手摺り自体の形成材料を少なくすることができると共に、その成形性を向上させることができる。
【0016】なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものでなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で変形実施できる構成を含むことは当然である。例えば、手摺りは、前述したような格子状手摺り形状でなく、従来の手摺りと同じく、単に一本の棒状からなる形態(図7参照)としてもよい。そして、この場合でも、複数個の貫通孔7または穴を設けることで、滑り止め機能を有し、更に、該貫通孔を用いることで、簡易に手摺り取付部を得ることができる。また、前述した実施形態においては、握り部6を形成する周縁枠5の手摺り取付部3に該当する個所(交差部分16)に穴15,15を設け、周縁枠5の他の個所に貫通孔7を設けた構成で説明したが、全てを貫通孔7とした構成や、全てを穴15,15とした構成、あるいは、交差部分16以外の個所の一部にも穴15,15を設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す手摺りの斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図3(a)は手摺り取付け状態を示す断面図、図3(b)は図2A−A断面図、図3(c)は図2B−B断面図である。
【図5】手摺りの浴室での使用状態の説明図である。
【図6】従来の手摺りの斜視図と、使用状態の説明図である。
【図7】他の手摺りの平面図である。
【符号の説明】
1・・・手摺り、2・・・手摺り本体部、3・・・手摺り取付部、4・・・開口、5・・・周縁枠、6・・・握り部、7・・・貫通孔、7a・・・大径孔、7b・・・小径孔、8・・・壁面、9・・・アンカーボルト、10a,10b・・・締め付け用ナット、11・・・筒状カバー、12・・・浴槽、12a・・・上方壁面、13・・・流し場、13a・・・上方壁面、14・・・中実部、15・・・穴、16・・・底部材
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図7】

【図5】

【図6】
